J1最多得点目前の広島・佐藤寿人

 中山雅史が持つJ1歴代最多得点記録157点に、あと3点までせまった広島のFW佐藤寿人(33)は、実は限られた時間でプレーしている。後半20分でFW浅野拓磨(20)と交代した19日の浦和戦に代表されるように、今季は第2ステージ第3節までの20試合すべてに先発しながら、全試合で途中交代している。早い例では後半8分でベンチに退いたこともある。こうした起用法に、どう気持ちの整理をつけているのか、心境を聞いた。

 広島は19日、敵地・埼玉スタジアムで、今季開幕から19試合負けなしを続けていた浦和に2-1で勝利した。0-1とリードを許していた後半20分に、佐藤は浅野と交代した。その際、「少ないチャンスでも1点頼むぞ」と声をかけ、ピッチに送り出した。その2分後、ドウグラスのスルーパスに抜け出した浅野が同点ゴールを決めた。さらに後半39分には、浅野の突破からこぼれた球をMF青山がミドルで蹴り込み、これが決勝点となった。

 浦和に試合を支配される内容の悪さに加え、自らも無得点。「ボール、ほとんど触れなかったもん」とばつが悪そうにしていた寿人は、勝利に大きく貢献した浅野については「(同点ゴールを)冷静に決めてくれたのは大きかった」と自分のことのように喜んでいた。若手が台頭し出場時間が削られれば、不満や焦りを感じてもおかしくない。だが、「彼らが信頼できるから」不満を口にしなくなったのだと明かす。

 J1J2を通じて11年連続2桁得点を記録し、J1通算154得点(7月19日時点)の実力者であるにも関わらず毎試合「もう交代?」と思わせるような時間でベンチに退いている。今季の1試合の出場時間は最も長くて79分。短い試合は53分で交代している。「もし自分が25歳ぐらいで、これだけで(ピッチから)出されてたら不満も口にしていたと思いますけどね」と、佐藤は笑う。限定されたプレー時間は、コンディション面も考えてのものなのだという。

 「90分出ることでけがのリスクもある。まだまだやれるという思いもありますけど、そこは理解してやっています。70分、60分で代わることも多いですけど、その70分、60分で(力を)使い切った方がハードワークできると思いますし」

 出場時間を区切る効果は練習にも現れていて、週の最初の練習から若手と同じメニューをしているという。もし、練習から全力を出せなければ、たちまちポジションは他の選手に奪われてしまうだろう。

 もちろん、現在のような起用法を最初から消化できていたわけではなく、「去年ぐらいは葛藤もありました」と告白する。昨年は7月ごろからフル出場がなくなり、時にはベンチを外れることも。「どうして試合に出ないの?」、「フル出場しないの?」という周囲の声がストレスになることもあったという。

 だが、森保監督から「まわりがどうこう言うのは(気にしないで)いいんじゃないか」と説得され、少しずつ考え方が変わってきた。「これで(監督と)ぶつかっちゃったら、わがままというか、何も出ない(生まれない)。全権は監督にあるので」。出場時間が減るのであれば、その中で自分ができる一番のことは何かを考える。キックオフから相手を追いかけて疲れさせるのはどうか、などと自身のあり方と向き合った。本来なら90分で使うエネルギーを60分間に凝縮させる。結果を残し続けられる一因はここにあるのだろう。

 浦和戦で2得点に絡み、たくさんの報道陣に囲まれる浅野を横目に、寿人は「(若手が)いい仕事をしてくれた。健全な競争というか、勝つための(監督の)選択だと思う」と、今の広島を表現した。12年連続2桁得点にあと1点。J1最多得点まではあと3点。数々の記録は、若手としのぎを削る日々から生み出されている。

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