【競馬】ゴールドシップ不安ぬぐえない

 ゴールシップは横山典弘騎手を背にゲート試験をあっさりクリアした
2枚

 1回目は15秒。2回目は1分弱だった。ゲートの中でおとなしく駐立する姿は“白い悪童”のイメージから程遠い。規定時間経過後、発馬機の扉が開くと、「こうすればいいんでしょ」と言わんばかりのきれいなスタートを切る。2回とも文句なしの内容だ。

 10月22日。ゴールドシップの発走調教再審査は、栗東トレセンの場長らが見守るなか、固唾(かたず)をのむ音が聞こえてくるような緊張感を漂わせて始まった。須貝師は「今からゴールドシップがゲートやるから。気ぃ遣ってな」と大声で周囲に念押し。馬上では美浦から駆けつけた横山典がオーラを発している。他厩舎の若いスタッフたちはできる限り人馬を刺激しないよう努めていたが…拍子抜けするほどスマートに合格を手にしてしまった。

 あらためて単勝1・9倍の断然人気を裏切り、15着に敗れた前走宝塚記念での“ご乱心”を振り返ろう。枠入りをゴネた天皇賞・春後の再審査明けとあって、芦毛の6冠馬は目隠しをして最初にゲートイン。思いのほかスムーズに入ったが、内でチャカつきだしたトーホウジャッカルにいら立ち、外のラブリーデイが枠入りを終えるとたまらず咆吼(ほうこう)。フェラーリのエンブレムのごとく2度も発馬機内で立ち上がり、約2秒もの出遅れをかまして万事休すだ。

 「まぁ、気に入らなかったんだろうな。馬同士の戦いというか。アレは親分だからさ。(両隣の馬に)“うっせー!”ってどう喝したのかもしれないし。本当のところは分からないけど」とは横山典の弁だ。この大出遅れにより、紙クズになった馬券は121億1835万7200円。「レースは馬にもストレスがかかる。誰も手を抜いているわけではないからな」。運が悪かったとしか言いようがない。-そう理解してほしい口ぶりだった。

 今回の“追試”を難なくパスしたのだから、始動戦のジャパンCへ向けて順風満帆…と書きたいところだが、個人的には不安が拭え切れない。表向きは優等生のフリをして、裏では舌を出して笑っている(と思えてしまう)のがゴールドシップだ。悪癖は決して根治したわけではない。不安は陣営とて同じで、横山典の「模擬テストで100点取っても、本番では取れないヤツもいるから」というセリフが象徴している。

 状況的にも後がない。天皇賞・春は「枠入り不良」、宝塚記念では「枠内駐立不良」のジャッジが下っている。この2項目と同様の所作が、次のジャパンCでも見受けられた場合は問答無用の“2ペナ”だ。出走停止の裁決がなされ、ラストランを予定していた有馬記念に出られなくなる。「そうなったらなったで仕方ない」と鞍上と指揮官は腹をくくっているようだが、現役最多のG1勝ち数を誇る馬が、そんな尻切れトンボの結末を迎えていいはずがない。

 誤解を恐れず言う。ジャパンCではVよりも、無事に走ることが最優先されるだろう。何としても勝たねばならないという、不退転の意志が現状において感じられない。まだ本番が1カ月先であることを考慮してもだ。

 ただし、枠入りが問題視された春天後の再審査、および宝塚記念では目隠しが使われたものの、駐立が試された今回の審査時は使用されていない。本番では先入れする必要もない(1枠1番なら仕方がないが)。そのあたりのちょっとした違いが、気難しいゴールドシップにとってプラスに働く可能性も残されている。

 ジャパンCは見(ケン)、有馬記念で買いというのが現時点での一応の結論ではあるが、苦戦必至の前評判をあっさりと覆す一方、絶対に勝つだろうと思われたところでポカをやらかしてきたのがゴールドシップだ。期待をいい意味でも悪い意味でも裏切るのが同馬のキャラなら、今回もこちらが考える結果と真逆になるのだろうか。毎度のことながら、悩ませてくれる馬である。(デイリースポーツ・長崎弘典)

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