いわき海星、全力プレーで感謝“一敗”
「センバツ・1回戦、遠軽3‐0いわき海星」(23日、甲子園)
1回戦1試合と2回戦3試合が行われ、史上初の21世紀枠同士の対戦となった第1試合では、いわき海星が遠軽に0‐3で敗れた。東日本大震災の津波被害を乗り越えての初出場で初勝利はならなかったものの、全力プレーで聖地を沸かせた。昨年8強の鳴門は、宇都宮商に競り勝って初戦突破。聖光学院は21世紀枠で初出場の益田翔陽に完封勝ちした。巨人・阿部の母校、初出場の安田学園は、盛岡大付にサヨナラ負けを喫した。
「いい試合だったぞ!夏また来いよ!!」。引き揚げるいわき海星ナインに、バックネット裏から声が飛ぶ。坂本主将の目に、思わず熱いものがこみ上げた。「最後まで笑顔で去ろうと思ったけど、温かい言葉に涙が出ました」。魂を込めた戦いぶりは、聖地の観衆にも確かに伝わっていた。
持ち味を存分に発揮した。サイド左腕のエース・鈴木は、直球とスライダーを外角いっぱいに集めて五回まで1安打投球。二回には素早いバント処理から二塁に送球し併殺に。若林亨監督(46)も「(津波被害で)グラウンドを使えなかった中で、ああいうプレーをしてくれたのはうれしかった」と喜んだ。
適時三塁打と中継ミスで許した六回の3点が決勝点となったが、失策はその1つだけ。キビキビとした野球で、1時間16分の締まった試合を展開した。完投した鈴木は「打たれて悔しいけど、自分なりに胸を張って帰りたい」と顔を上げた。
それぞれが地元への思いを胸に臨んだ甲子園だった。父親が水産会社を営む中堅手の比佐は、家業を継いで故郷に貢献する夢がある。「海星の野球を見て、1回来てもらえたら」。厳しい状況にある福島とその海の存在を、知って欲しかった。
ベンチ入り定員ギリギリしかいない16人の部員が改めて感じたのは、人の支えだ。17日の練習試合では対戦した春日丘からオリジナルタオルを贈られた。福島から遠く離れた地で触れた優しさ。大粒の涙を流した比佐は「福島の人じゃない人も応援してくれた。そういう人のためにも、また戻ってきたい」と誓った。
恩返しの意味も込めたひたむきなプレーは、観衆の心をとらえた。夏も、その先も、全力プレーの恩返しは終わらない。
