【ボート】茅原悠紀から末永由楽へ受け継がれた勝利のバトン

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 2024年のボートレース界が始動して2週間。新春レースは昨年のグランプリ戦士が地元に凱旋して盛り上げた。児島ボートの年末年始は岡山選手権。1月2日に最終日を迎え、昨年の獲得賞金ランク4位(1億5000万円超)の茅原悠紀(岡山)がイン速攻で優勝を飾った。

 私は出張先の鳴門でモニター越しに優勝戦を観戦。ゴールの瞬間、スタンド側に大きく頭を下げる茅原の向こう側に大観衆の姿を思い浮かべた。

 1月1日、準優勝戦12R開始直前に能登半島で地震が発生。詳細が不明である中、優勝戦出場を決めていた吉田拡郎ら岡山支部の選手は被災地に思いをはせて胸を痛めていた。

 12R1着で優勝戦1号艇を手にした茅原も「最終日、開催できるんですかね?今垣(光太郎)さんは大丈夫かな」と共にグランプリに出場した石川県出身の今垣を心配していた。そんなわけで、本来なら新年の目標を高らかに宣言してもらう場であるが、みんなで話し合い、優勝戦出場者インタビューは控えめなトーンで行った。そして迎えた優勝戦。こん身のスタートを決めて優勝を飾った茅原の姿から、走ることでみんなに勇気を与え、貢献する覚悟が見て取れた。

 8~13日に行われた「日本モーターボート選手会会長杯」は岡山支部の末永由楽(37)=100期・A1=が通算7回目の優勝。強風のため安定板が装着され、2周に短縮された荒れ水面の中、2コースからインの柳沢一(愛知)を差し切った。

 大混戦となったシリーズはSG覇者の柳沢がオール3連対で予選1位。末永は2位で予選を突破。両者が準優で逃げて優勝戦は1、2号艇。予選3位の船岡洋一郎(広島)は準優でイン2着となり4号艇。優勝戦はホーム追い風6メートル。末永はコンマ06のトップスタートを踏み込み、2コースから差し切った。カドまくりに出た船岡は1周2Mで差しを狙ったがバウンドして2着。人気を集めた柳沢は3着となり、3連単は1万210円の好配当で決着した。

 2021年8月以来の地元Vを決めた末永は「めちゃくちゃうれしいです。スタートは行く気で行きました。勝つにはあれしかない」とここ一番でバチッとスタートを決めた。「今節は徐々に仕上がって、準優勝戦が一番の仕上がり。最終日は朝からしっかり調整して、準優とは全然違う調整をして完璧だった」と胸を張った。

 準優で納得の足に仕上げながら、全く違う調整で臨んだ優勝戦。そこには、気象条件を先読みした緻密な戦略がうかがえる。これまで茅原の陰に隠れていたが、茅原の口から何度も「末永由楽」の名前が出ていた。茅原が2号艇で差し切りVを飾った昨年2月のG1・中国地区選(児島)では、湿度とペラ調整のタイミングを計り、最大限に機力を引き上げる作戦を練っていた。茅原は「前の夜、宿舎でずっと調整について由楽と話していた。優勝できたのは由楽のおかげ」と語っていた。

 今や茅原は岡山支部で絶対的な存在。その茅原をみんながリスペクトして背中を追いかけ続けている。1期後輩の末永も「茅原さんには、いつも精神的にアドバイスをもらっている」と常にそばに寄り添ってきた。他の選手と末永の違いは、茅原が末永に一目置いていることだ。それは言葉の端々に表れている。茅原は本気度を見せつけ、2023年を駆け抜けた。

 今年もグランプリVへの戦いが始まっている。茅原から優勝バトンを受け継いだ末永も、ついに宣言。「今年はSGに出たい。まずはV5」と2025年のクラシック出場を目標に掲げた。

 だが、SGへワープする方法が一つある。昨年、茅原がクラシック出場権を勝ち取ったのはラストチャンスの中国地区選。末永も2月に宮島の中国地区選に出場する。「それで行けるのが一番ですね。今年は期待して下さい」と末永は切れ長の目を光らせた。ここ一番の勝負度胸は満点。着実に力もつけている。今年年は気持ちで走る男・末永の躍進に乞うご期待!!(児島ボート担当・野白由貴子)

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