【児島G1コラム】前節Vの北村征嗣から師匠・松井繁へとつながるバトン F2でも良機の王者に警戒

 前節は北村征嗣が4コースカドから差して優勝。「児島初V、ちょっとはうれしい?」と話を振ると、予想外の答えが返ってきた。「少しやなくて、めっちゃうれしいっすよ。住之江の初優勝の時みたいに、野白さんの前で優勝ができて良かった」と最高の言葉をくれた。20年来の付き合いになるが、そんなことを言うタイプではない。若い頃は金髪をなびかせ、長い足でスッスと歩き、私がゼェゼェ言いながら追いかけるパターン。それでいて、いつもサラリとコラムのネタを提供してくれる。ちょっと生意気なところもかわいかった。

 松井繁が王位に君臨する大阪支部は層が厚い。実力を出し切れず、G1戦線の壁に阻まれる若手を何人も見てきた。北村もそうなってしまうのではないかと、正直心配したこともあった。だが、ある時期を境に北村は変わった。松井に目を掛けてもらい始めた頃からだ。

 北村の口から「松井さん」というワードが数多く登場し、松井とのやりとりを話す北村はイキイキとしていた。松井の背中を追いかけ、一緒にSGの舞台に立ちたいという思いを強くしたに違いない。昨年V5の北村は、今年3月のボートレースクラシックに出場。22年5カ月目にしてSG初出場を果たした。

 ちまたにあふれる北村の写真は金髪のままだが、今年いきなり黒髪に変身。それは父親としての自覚の現れだ。私も見慣れず最初は戸惑ったが、松井も同じだったとか。「松井さんから、『その髪になって見つけにくいわ!!』って言われました」と北村はうれしそうに話してくれた。

 お盆前の児島では腰痛に悩んでいた北村だが、「また自転車に乗るようになって腰が治った。鳴門から大阪までなら楽勝。淡路島1周で150キロですよ」と子どもを連れたロードバイクで真っ黒に日焼けしていた。自転車を再び始めた北村に、松井は「スノーボードとかより自転車の方がケガの心配がないからいい。せやけど、気いつけて乗りや」と言ってくれたらしい。

 ピットでの松井は仕事の鬼だが、後輩たちに慕われる理由が分かる。金髪と真っ赤なウエアがトレードマークだった北村が、今では黒髪&全身ブルー。背中に自転車の絵が描かれた上着と、SGブルーのウエアがピッタリ合っている。下降気味だったエンジンをペラで立て直した北村は「いっぱい調整したから、松井さんにいい報告ができる」と本当に喜んでいた。

 そして、「グラチャンの時、急に松井さんに話しかけたら、『自分、近い、近い。ディスタンスや』って言われた」と落ち込む私にこう言い残してくれた。「北村が喜んでたって、松井さんに話しかけて下さいよ。絶対に大丈夫だから」と。その言葉があったから、今節はごく自然に、緊張せず松井に声を掛けることができた。

 フェースシールド越しで聞き取りにくい中、耳を傾け、うんうんとうなずき松井は丁寧に答えてくれた。「ここ3節、回り足がいいエンジンなんですよ」。「うん、機歴をみたら、そんな感じやな。ペラは自分と違う形やったから叩いた。班で変わらなかったし悪くはない」。「松井さんのさばきに合うエンジンのような気がしますが…」。「Sを行って攻められる立場じゃないから、しっかりと着を拾えるように調整をする。初日に乗って合わせるわ」。

 こんなやりとりができた。北村クン、ありがとう。そして、松井さん。北村クンをSGに連れて行ってくれてありがとう。F2で苦しい今を乗り切って、まだまだ王座に君臨し続けて下さい。そう伝えたいと心から思った。

 12R 北村が優勝した翌日、三国で1年3カ月ぶりにVを飾った松井。的確なさばきで⑥↔①、⑥↔④流し。

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