広島から競輪界の頂点へ 松浦悠士が賞金トップ独走「もっと強く、もっといいレースを」

 5月に京王閣競輪で行われた「第75回日本選手権競輪」(G1)で大会初優勝を飾った松浦悠士選手(30)=広島支部・98期。今年は4場所連続の優勝を飾るなど圧倒的な強さを見せつけ、獲得賞金は早くも1億円を突破。賞金ランキングのトップを独走する。

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 快進撃が止まらない。「勝つ」と公言して臨んだGI最高峰の日本選手権。ゴール前での3選手による大接戦を制して「ダービー王」に輝いた松浦は、次戦の五稜郭杯争奪戦(函館)、さらに地元広島で開催された全日本プロ選手権も優勝。今年の獲得賞金は1億2214万円6000円。2位に約3600万円差をつけて賞金ランキングのトップを走っている(6月10日現在)。

 競輪の世界に身を投じて12年。「日々の練習や日常生活も含めて“強くなるためにはどうすればいいか”を常に考えながらやってきた。その積み重ねがこの結果になって表れている」と自負する。

 広島市出身。中学までは水泳をしていたが、進学した市立広島工高に水泳部がなかったため、自転車部に入った。高2の時に顧問から競輪の道を勧められ卒業後、競輪学校(現養成所)に入学。10年にデビューした。伸び悩んだ時期もあったが、A級だった5年目の時、先輩選手の「お前の脚力があればS級1班になれる」という言葉に自分に足りないものを気付かされた。

 「今から思うと、あの頃は考え方が本当に甘かった。ただ練習しているだけ。勝つために、強くなるためにどうするかというのが全然なかった。先輩の一言で目が覚めた」。自己啓発の本を読みあさり、生活のすべてを競輪に結びつけた。酒もやめた。「若い頃は仲間と食事に行った時に次の日の練習に影響が出るのが分かっていても、楽しくてつい飲んでしまっていた。今は練習の質を落としたくないので飲まない」

 ストイックな生活を送る松浦だが、どうしてもやめられないものがスイーツだ。「昔から甘い物が大好き。競輪に影響が出ないように体重を気にしながら疲れた時などに食べたりしてます」。日本選手権を制した時も「節制してきた自分へのご褒美に」と4、5種類のスイーツをほおばり「4日間で体重が2キロ増えた」と笑う。全国を転戦する生活。各地にお気に入りのスイーツがあり、広島では「MELANGE De SHUHARI(メランジュドゥシュハリ)」のイチゴミルクサンドに目がない。

 子供の頃からカープファンで、小中学生の頃は旧市民球場によく足を運んだ。「好きだった選手は緒方さん。監督時代も応援していました」。3年前に競輪のイベントで知り合った一岡投手と親交がある。カープから刺激を受けることも多く、「3連覇した時に感じたのは、チームが強ければ、ファンからたくさん応援され、それが力になって、さらに強くなるということ。僕もファンから応援してもらえる選手になりたいと思っている。そのためにも、もっと強くなって、もっといいレースをしたい」と向上心は尽きない。

 競輪といえば、ギャンブルとしての側面が強いが、松浦はスポーツとしての魅力も訴える。「今はコロナ禍なので難しいとは思うけど、多くの人に競輪場に足を運んでレースを見てほしい。映像と違ってスピード感を感じられるし、風を切る音や車輪の音も聞こえてくる。僕ら選手も1着を目指して頑張った結果、車券を取ったお客さんと一緒に喜べたらいいなと思う」。プロ野球やJリーグなどと違い、選手のガードもそれほど厳しくない。競輪場の出入り口などで気軽に触れ合えることも魅力だという。

 賞金レースは間もなく折り返し点。初の賞金王へ向けてさらにギアを上げていく。「チャンスが来た時にしっかりと取りにいけるだけの準備をしておくことが大事。結果は後からついてくる」。19年は賞金ランク3位、昨年は同2位と着実に階段を上がってきた。機は熟した。広島が誇る実力者が一気に頂点へ駆け上がる。

(デイリースポーツ・工藤直樹)

 松浦悠士(まつうら・ゆうじ)1990年11月21日生まれ。広島市出身。市立広島工高卒。98期生として2010年7月に熊本でデビュー。主なタイトルはG1・競輪祭(19年小倉)、G2・ウィナーズカップ(20年福井)、G1・オールスター競輪(20年名古屋)、G1・日本選手権競輪(21年京王閣)。通算獲得賞金は5億4660万2511円(6月10日現在)。S級S班。168センチ、73キロ。太もも回り60センチ。家族は妻と1男1女。

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