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JKA吉田新会長ファン目線でカイゼン

 「競輪・人生」と書かれたポスターの前で笑みを浮かべて話すとJKA・吉田和憲会長=東京都千代田区のJKA本部(撮影・西岡正)
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 競輪とオートレースを統括する公益財団法人JKAは6月26日、豊田自動織機相談役の吉田和憲氏(68)の新会長就任を発表した。任期は2年。JKA会長は2005年に就任した第12代会長・下重暁子氏(元NHKアナウンサー)、第13代会長・石黒克巳氏(元毎日新聞専務取締役、現JKA名誉会長)に続き3代続けて民間からの登用になるが、経済界からは初。吉田新会長に競輪に対する熱い思いと、業界の未来について聞く。(取材、構成・坂元昭夫)

  ◇  ◇

 -実は大変な競輪ファンとお聞きしましたが。

 「豊田自動織機の前に勤めていた会社があったのですが、その会社の先輩が大変遊び好きで、マージャンはもちろんですが、競輪も覚えておかなければいかんということで、初めて連れて行ってもらったのがきっかけですね。23歳のときです。その会社は厚木に工場があったので、平塚と小田原にはよく行きました。見事にはまりましたね。1年くらいは収支がチャラか、ちょい浮きくらいで。ひょっとして僕は天才じゃないかと(大笑い)」

 -以来ずっと競輪ファン。

 「そう、競馬もボートもパチンコもしません。だから悩んだんですよ、この仕事をお受けするときに。車券は買えるのかと聞いたら、買えないんですね。当たり前か(笑い)。45年間も買ってきたのにね。それだけが残念でならない」

 -昭和40年代の競輪をご存じということになりますね。

 「高原永伍、工藤元司郎さんなどのあとで、阿部道、藤巻昇、新田計三さんなんかが強かったですね」

 -車券は本命党ですか、穴党ですか。

 「穴しか買いません。全知全能を尽くして穴選手を探します(笑い)。そのなかでも、3番手の選手を買うのが好きですね。(※1)」

 -穴買いなら、的中したときの払戻額もデカイと思います。

 「穴狙いだから手広く買います。また、もうかっていたら浮いたお金は持って帰らない主義なんですよ。だから最終レースまでそこそこもうかっていたら最後も勝負。それでもまた、50倍から300倍くらいの穴を狙う(笑い)。100万円以上の払い戻しは生涯で3回かな。窓口のおばさんが拍手してくれたのを覚えてますね」

 -印象に残っているレースは。

 「平塚だったかな、ちょっと曖昧なんだけど。藤巻清志と新田計三の順で入って、当時は2車単しかなかったから、2000円くらいの配当で、それを3000円くらい持っていたので6万円になった。でも、飲み屋で全部使いましたよ(笑い)」

 「最近では12年の西武園記念決勝ですね。武田豊樹が前で平原康多が番手でマークして、3、4番手も関東地区の選手が固めるレースになった。そこで武田はまくりで1着になるけど、追走する平原は先行するラインのマーク屋に飛ばされて着外になって、人気薄の選手が2、3着になるなと推理しました。その通りになって3連単で7万円くらいついた。穴買いだからなかなか的中しないけど、たまに自分の読み通りのレースになることがある。これが競輪の面白さですね」

 -それだけ競輪が好きなのに、車券の買えないJKAの、しかも会長職に。

 「いろんなしがらみがあったのですが、周りから“まだ奉公が足らん”だとか“まだまだ世のため人のために働け”だとか言われて。最後は“競輪の熱烈なファンなら、おまえが業界を盛り上げないと駄目だろう”なんて調子のいいこと言われて(笑い)。それで今は単身赴任ですよ」

 -競輪界は昨年度、23年ぶりに売り上げが前年度比を上回りました(※2)。しかし、全盛期の売り上げには遠く及びません。

 「関係者のなかには車券が買えないことで、競輪の本当の楽しみを知らない人もいると思います。僕はファン目線ですから。また、トヨタグループのなかでも、トップレベルの車を作ってきた自負もあります。僕がトヨタで築いてきた方針管理、業務改善(※3)のやり方をスタッフに覚えていただきたい」

 -トヨタの社是に『カイゼン』という言葉があります。今一番、競輪界を『カイゼン』しなければならないことは。

 「競輪は入り口というか、最初のとっかかりが難しいのかもしれません。確かに前の会社では僕以外に競輪をするような人はいませんでした。でも、何人か連れて行くことで仲間が増えて、今では僕よりはまっている人がたくさんいます。一般大衆に対してテレビコマーシャルでアピールすることも大事ですが、仲間から仲間へ、草の根的な拡大ができないものか。そんなことを考えています」

 「生活費をつぎ込むのではなく、少し余ったお金で映画を観たり、音楽を聴いたりするのと同じ感覚で競輪を楽しんでもらえないでしょうか。特に40、50歳代で生活に余裕ができた人、残りの人生を謳歌(おうか)できそうな人に競輪を見てもらいたい。人生の楽しみを増やしてほしいですね。ぜひ第2、第3の吉田が出てきてほしいものです」

 -ファン獲得という点では、競輪を知らない人でもこの選手なら知っているというスーパースターの存在が必要かと思います。そういう意味では16年のリオ五輪、20年の東京五輪はチャンスです。

 「サイクルスポーツという点では、日本人の実力は欧州と比べてかなり劣っているし、遅れているのが現実です。グローバルで見ると、日本の選手はラップが出ない。今でも日本の競輪に外国人選手を呼んでいますが、なかなか歯が立たない。心技体の育成を科学的に、そしてロジカルに強化してほしいと思います。競輪の普及ということも含めてバックアップしたいです」

 「マクロ的に将来を考えたら、今の競輪も大事ではありますが、挑戦してみようという選手に対しては寛大な配慮が必要ではないかと個人的には考えています。でなければ、到底メダルには届きません。これからしっかり考えたいと思います」

 -12年から再開されたガールズケイリンについて。

 「もう少し長い目で見たいですね。今後は選手層に厚みが出て、ベテラン、若手などさまざまな個性を持った選手が出てくるでしょう。そうなると、車券的な面白さも出てきます。可能性は秘めていると思います」

 -改めてですが、競輪の一番の魅力とは。

 「自主、自立、そして自分で参画するという楽しさですね。要するに、自分でレースを推理して、自分を信じて車券を購入する。実際にその通りなったら最高ですし、この喜びをたくさんの人に味わってほしい。これだけ推理を楽しめる競技は老化の防止にもなりますし、健康維持にもつながります。間違いなく豊かな人生になると信じています」

  ◇  ◇

 ※1 男子の競輪は基本的には9人が3つ、もしくは4つなどのグループに分かれて戦う(=ライン戦)。そのラインのなかでも前の方で走る選手が有利。3番手は不利だが、入線すれば好配当。

 ※2 昨年度の売上は6158億8102万9300円。前年度比101・6%で、23年ぶりに前年度比を上回った。最高は91年の1兆9553万4012万4900円。

 ※3 今や世界語となっている、トヨタグループの社是『KAIZEN(カイゼン、改善)』。吉田氏は積極的に『カイゼン』に取り組み、工場運営の効率化を図った。

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