子の視力「メガネ作ればいい」と放置は危険!? 強度近視は将来の眼疾患リスク激増…親が知るべき予防策【眼科医が解説】

 Aさんの息子は小学2年生で、家に帰るとすぐスマートフォンや携帯型ゲーム機で遊ぶ日々を送っている。そんな息子は最近になって、遠くの文字を目を細めて見たり、遠くにある物を見る時に、わざわざ近くに行って見ることが増えてきた。 

 息子の視力が低下していることを察したAさんは「大きくなったらメガネを作ってあげなきゃ」と軽く考えていた。しかし学校での視力検査で「メガネがないと黒板が見にくいレベル」という結果が出る。

 また、子どもの近視について調べてみると、10歳以下で近視を発症すると将来的に『強度近視』となる確率が上がるようだ。では、なぜ子どもが近視を発症すると、将来近視が強度になる可能性が上がるのだろうか。そして進行を防ぐためにどうすればいいのか。さいたま市大宮のくらかず眼科院長・倉員敏明さんに話を聞いた。

 -視力が低下した子どもが増えているというのは本当なのでしょうか

 はい、特に東アジアにおける近視の増加は『エピデミック(流行)』と呼べるレベルにあります。日本は、世界的に見ても近視率が極めて高い国のひとつです。日本国内で2019年に発表された調査では、小学生の約76.5%、中学生では約94.9%が近視であるとされています。

 実際の診療現場でも、8歳前後で急激に視力が低下するケースが目立っています。特にコロナパンデミック以降、生活スタイルの変化(デジタルデバイスの使用増加や屋外活動の減少)に伴い、新規の発症率が急増したことが確認されています。

 -10歳以下の低年齢で近視を発症すると、なぜ将来的に『強度近視』へと進行しやすくなるのでしょうか

 近視は、眼球の奥行き(眼軸長)が異常に伸びてしまう現象です。通常、目の成長は12歳ごろに落ち着きますが、近視を発症すると、10代後半から20代前半まで眼軸の伸びが止まらなくなります。10歳以下、特に8歳未満で発症すると、成長が止まるまでの伸びる期間が長いため、最終的な近視の程度が非常に深刻になりやすいのです。

 早く始まった分だけ、眼球が引き伸ばされる時間が長くなり、結果として『強度近視』に達するリスクが跳ね上がるというわけです。

 ※強度近視:一般的に「屈折度数が-6.0D(ディオプター)以下」、または「眼軸長が26.0mm以上」の状態を指す。

 -近視が、視力低下以外の眼疾患を引き起こすのは本当でしょうか?

 はい、その通りです。近視は単に遠くが見えにくくなるだけではなく、眼球が前後に引き伸ばされることで目の奥にある網膜や脈絡膜が薄くなり、構造的に脆くなります。その結果、将来的に眼疾患のリスクが劇的に高まるのです。

 例えば強度近視の場合、通常の人と比べて後嚢下白内障リスクは5倍、眼球の変形により視野が欠けていく緑内障リスクは3倍、網膜に穴が開き剥がれてしまう網膜剥離リスクに至っては13倍にも跳ね上がります。強度近視を、別名『病的近視』と呼ぶ理由でもあります。

 ほかにも、視力の中心部をつかさどる黄斑がダメージを受け、失明の原因につながる近視性黄斑変性や、白内障が若いうちから発症しやすくなるなど、近視にはさまざまなリスクがあります。これらの病気は成人後に現れることが多いですが、その原因は子どものころの眼軸の伸びにあるのです。

 -子どもの近視の進行を抑えるために、日常生活で取り入れられる対策はありますか

 まず、1日2時間は屋外活動をすると良いでしょう。太陽の光が網膜を刺激してドーパミンを放出させることで、眼球の伸びを強力に抑制します。木陰や日傘の下でも十分な効果があります。

 次に「20-20-20ルール」です。20分間近くスマートフォンやゲーム機を見たら、20秒間、20フィート(約6メートル)先を見て目を休ませてください。

 また、画面との距離は少なくとも50cm程度に保ち、部屋の照明を十分に明るくしましょう。スマートフォンや携帯型ゲーム機など手の中に収まるツールは、どうしても顔に近づきやすいため長時間の使用には適していません。これらを楽しむ際は、テレビ画面に映し出す(キャスト機能を利用する)か、パソコンのモニターなど、自然と距離が保てる大きな画面に切り替えることをおすすめします。

 -近視の進行を抑えられるような治療法はないのでしょうか?

 自費になりますが、眼軸長の伸びを遅らせる低濃度アトロピン点眼や近視抑制用眼鏡(DIMS/HALT技術)、寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装用し角膜の形状を平らにするオルソケラトロジーなどが治療法としてあります。

 「大きくなってからメガネを作ればいい」という考えを「今、目の伸びを止めてあげる」という予防の意識に変えることが、お子さんの将来の視界を守る何よりのカギとなります。まずは眼科で、屈折度数だけでなく「眼軸長(目の長さ)」を測定してもらうことから始めてみてください。

 ◆倉員敏明(くらかず・としあき) さいたま市大宮・医療法人創光会くらかず眼科院長 愛媛大学医学部卒業。手術特化の眼科として、複数の眼科医によるチーム医療体制で2200名以上の手術を行う(2025年)。手術器具・手術方法の開発や眼内レンズの研究にも取り組んでいる。

(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)

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