大阪唯一の映画看板絵師「さびしい、残念な気持ち」レギュラーで掲げていた老舗映画館31日閉館

 大阪のシンボルタワー・通天閣近くにある老舗映画館「新世界国際劇場」(大阪市浪速区)が、31日の上映を最後に閉館する。1930年(昭和5)完成、1950年(昭和25)ごろに映画館となった同劇場の名物だった手描き映画看板を制作していた映画絵アーティストの八条祥治さん(69)は「毎週のように看板が変わって、ずっとこの仕事をしてましたので、この仕事がなくなると思うとものすごくさびしい気持ちと、残念な気持ち」と心境を語った。

 2月に、同劇場支配人の冨岡和彦さん(59)から閉館を知らされたといい「『3月いっぱいで…』ということで、びっくりした」と振り返る。大阪で1人だけの映画看板絵師となった八条さんは1980年(昭和55)、映画看板制作会社から独立した父・孝昌さんが設立した「八條工房」に入社。2010年(平成22)から、新世界国際劇場の看板を手がけている。

 水曜日初日の週替わり上映作となる洋画3本の看板を、毎週火曜日に八条さん自ら劇場に搬入し、かけ替える。その際、冨岡さんから次回作の原稿をもらい、横2メートル40センチ、縦1メートル8センチの看板の上から白い紙を貼り、アクリル絵の具で新たな絵を描く。「原稿を渡されて、こういう絵で、文字を指定される。洋画3本立なので、その3本の中の1本を人物の大きな顔を描いて、あとは(タイトルの)文字だけっていうのがある」。毎週8枚から9枚。AIでは絶対表現できない、味のある看板が出来上がる。

 かつて、映画館には巨大な絵看板が掲げられていた。シネコンには、そのスペースはないだろう。「昔からの小さな映画館で、たとえば寅さんとか昔の作品を描いて、それをずっと掲げているところはあるかもしれない。劇場自体がシネコンとかになってね、昔ながらの大きな看板を掲げるような造りじゃない。映画館単体で建っているところはもう、ほとんどなくなっているんちゃうんかな…」と語る。

 マ・ドンソク主演の映画「犯罪都市 PUNISHMENT」の絵看板がお気に入りだという。「絵、文字も手描きで描いて、洋画なのでサブタイトルもついてたりするんですけれど、いっぺんそれ、間違えたことがありましてね…タイトルを間違ったんです。バットマンって映画あるでしょう?あれを間違えてね。『BATMAN』を『BADMAN』って描いたんですよ。お客さんに言われて、どうしようかな…と思って。車で絵の具を取りに帰って、大きな脚立を持っていって、そこで描き直した」と、印象深い出来事を挙げた。

 企業ポスターの原画や、老人ホームに掲げる大きな映画の看板、レトロ喫茶店などからの制作依頼があるとした八条さん。唯一、レギュラーで映画看板を掲げていた新世界国際劇場の閉館に「家業がなくなる言うんかな。映画館の看板という仕事がなくなるようなものすごい…もっと続けていたかったなとは思っているんですけどね」と喪失感を隠せない。

 映画看板は今後、どうなるのか?「いよいよ記憶から…何年かたったらね、それこそもう、今の若い人が見たことがないみたいに。昔の昭和生まれの時代の人たちが『懐かしい』と思って、看板見てもらったりしている。今のところ、新世界行ったら見られる感じやから。いよいよ無くなったら、それこそ認識されにくくなるわね。これからの人たちにね」と危惧する。

 「劇場さんのほうがね、歴史のある映画館で、このたび閉館することになって。3月25日が水曜日で、前日の24日は最後の映画の看板を持っていくわけです。3月31日にその映画は終わるんで、映画じゃないけれども、劇場には看板をそのまま全部外すんじゃなしに、向こうの考えているような看板を最後は上げるみたいです。楽しんでもらうというか…」。映画看板が注目を浴び、文化を残そうという機運が高まる“ハッピーエンド”を望むばかりだ。

(よろず~ニュース・杉田 康人)

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