津軽海峡からアンパンマンまで…作曲家・三木たかし集大成CD発売 テレサ・テン未発表曲、坂本九の遺作も

 日本を代表するヒットメーカーの1人で、2009年に64歳で亡くなった作曲家・三木たかしが今年で生誕80年を迎えた。その三木から数々のヒット曲を提供された歌手のテレサ・テンは没後30年となる。節目の年に3枚組CDとして発売された作品集「三木たかし ソングブック」(ユニバーサルミュージック)にはテレサの未発表曲や三木が自ら歌った秘蔵曲も初収録され、さらに没後40年となる坂本九の遺作も収められた。本作に携わった識者に話を聞いた。(文中敬称略)

 三木は67年に職業作曲家としてデビュー。その膨大な曲の中から今回の3枚組CDは(1)ヒット曲、(2)シングルB面曲やアルバムの隠れた名曲、(3)テレビ番組や映画の主題歌、舞台音楽やイベントのテーマ曲、未発表デモ(※試作段階の音源)という3カテゴリーで編集され、計61曲が収録された。

 (1)には、石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」、テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」「つぐない」「愛人」、実妹である黛ジュンの「夕月」、あべ静江の「みずいろの手紙」、森山良子の「禁じられた恋」、西城秀樹の「ブーメラン・ストリート」、岩崎宏美の「思秋期」、五木ひろしの「追憶」、坂本冬美の「夜桜お七」といったヒット曲が並ぶ。

 (2)では、昭和の喜劇王“エノケン”こと榎本健一の「破れハートに風が吹く」、女優・浅丘ルリ子が歌うボサノバ「シャム猫を抱いて」、俳優・勝新太郎によるディープ歌謡「夜はくりかえす」といったレア曲の中、坂本の隠れた名曲「心の瞳」に注目。85年8月12日の日航機墜落事故によって43歳でこの世を去る3か月前にリリースされていた人生最後のレコーディング曲だ。40年の時を超えて“九ちゃん”の優しさに包まれた荘厳な歌声が心に染みる。

 (3)では全国高校サッカー選手権の大会歌「ふり向くな君は美しい」(ザ・バーズ)、テレビ朝日系バラエティ番組「欽ちゃんのどこまでやるの!」で女性トリオ「わらべ」が歌った「めだかの兄妹」(編曲は坂本龍一)、国民的アニメ「それ行け!アンパンマン」の主題歌「アンパンマンのマーチ」(作詞は原作者・やなせたかし)などに続き、貴重な4曲がボーナストラックに入った。

 95年に42歳で亡くなったテレサだが、84年頃に録音したまま倉庫に眠っていた幻の未発表曲「ラブソングは夜霧がお好き」がマスターテープから奇跡的に発見されて初収録。さらに、歌手だった三木が歌う3曲が続く。16歳で作詞・作曲、本名の渡辺匡名義で歌った「恋のとりこ」(61年)、70年発売のソロシングル「夜汽車の女」、そして、味わい深い三木のギター弾き語りによる未発表デモ「薔薇とワイン」。いずれも大衆音楽史の貴重な資料として注目される。

 監修・選曲・解説を担当したアンソロジスト(編集者)の濱田髙志は今回発屈されたテレサの未発表曲に関して「シングル曲に比べると、歌詞の内容(※作詞は荒木とよひさ)や路線が異なるので、アルバム収録曲として用意したものではないか」と指摘した。

 今回の作品集について、濱田は「三木さんは作曲家として、まだまだこれからという年齢で亡くなられましたが、ご存命中に書かれ楽曲は数多い。これまではヒット曲を中心とした1枚物の作品集しかなかったので、今回はカテゴリーごとにディスクを分けることで、三木さんの幅広い音楽性を俯瞰(ふかん)できる構成にしました。本作品集をきっかけに、ほかの作品にも興味を持っていただければ」と、その価値を説いた。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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