若手実力派の竜星涼 YAZAWAの「成り上がり」に感銘 不思議な運命で役者の道へ
若手実力派として注目を集めている俳優・竜星涼(29)。昨年、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」でヒロインの兄にして破天荒なトラブルメーカー「ニーニー」を見事に演じ切り、一躍脚光を浴びた。今年は1月スタートのフジテレビ系主演ドラマ「スタンドUPスタート」(水曜、後10・00)で大胆不敵にして熱血な投資会社の若き社長・三星大陽役で躍動。目まぐるしく変わりゆく環境の中でも、本人は驚くほど穏やかに自身の「今」と「これから」を見つめていた。
竜星が演じるのは、人生に行き詰まった訳アリ人材たちに体当たりで向き合う“人間投資家”。当人たちの悩みや不安を吹き飛ばし、人生を鮮やかに変えていく。
「おせっかいな所は似ていますね。僕も思ったことは素直に言う方なので。言った後でおせっかいになってしまったなと思う時も。明るい性格も似ています。僕も根が明るいんですよ」と役柄と自身を重ね合わせた。
2010年に同局系ドラマ「素直になれなくて」で俳優として最初のキャリアを刻んだ。「時の重さを感じます。あのころは10年以上も俳優を続けている自分を想像できていなかった」と述懐した。
今作ではさまざまな登場人物の運命を切り開いていく役を演じているが、自身も不思議な運命に導かれて役者の道を選んだ。学生時代は、俳優業への興味は一切なし。サッカー部に所属しながら助っ人で出場した陸上大会の走り高跳びで優勝するほど活発な少年期を過ごした。だがその中で、1人の圧倒的な“カリスマ”と出会う。
「母が矢沢永吉さんのファンで、家ではずっとYAZAWAが流れていました。思春期はずっと矢沢さんの曲に触れていました。将来を悩んでいたとき、母から矢沢さんの本『成り上がり』を渡されたんです。歌以外の矢沢さんを知って、もっと好きになった。俺も自分にとってのスターになるものを本気でみつけなきゃって」
矢沢の半生がつづられたストーリーに強い衝撃と感銘を受け、将来へのベクトルが明確に変わった。そして「その数日後に(現事務所に)スカウトしてもらったんです。『もしかしたら、これかもしれない』と」。
さらに背中を後押ししたのが昔から大好きな俳優だった。「(スカウトで)渡された名刺に反町(隆史)さんの名前があったんです。会えるのかなって」。偶然の出会いが連鎖し、引き込まれるように芸能界の門をくぐった。その反町とは、今作で初共演が実現。「高校生の自分に言いたいです。『反町さんと一緒にドラマに出られるぞ』って」と冗談めかして笑った。
強い思いを持って飛び込んだ役者の世界。演技へのこだわりも強い。「どこかに愛嬌(あいきょう)を出せたらいいなと。そういう作りや見せ方は意識していますね」としつつ、「脚本が80%以上だと思っています。書かれているものをどこまで深く掘り下げられるか。ト書きにある行間やセリフまわしが違えばキャラクターは変わってくるので、そこを大事にしています。自分の言いやすい言葉にならないように。できるだけ活字のままを伝えられるように」と表情を引き締めた。
10代から試行錯誤を繰り返し、たどり着いた新境地。3月には30歳の誕生日を迎える。
「20代でもっとやれたことがあったかもなと考えることはあります。でも、やれてきたから今があるのかなとも。階段を上っているときが一番楽しい。だから今が楽しいし、30代も楽しみで仕方ないんです」
まだまだ道の途中。自らの課題にも体当たりで向き合い、未来をますます鮮やかに変えていく。
◆竜星涼(りゅうせい・りょう)1993年3月24日生まれ。東京都出身。2010年ドラマ「素直になれなくて」で俳優デビュー。「獣電戦隊キョウリュウジャー」(13年)で初主演。「小さな巨人」(17年)「昭和元禄落語心中」(18年)など話題作に多数出演。昨年、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」でヒロインの兄を演じて一躍注目を浴びる。
