【加藤一二三さんを悼む】将棋を愛し、食を愛し、自分自身を愛した人
将棋の加藤一二三(かとう・ひふみ)九段が22日午前3時15分、肺炎のため東京都済生会中央病院で死去した。「ひふみん」の愛称で親しまれ、2017年の引退後は、テレビ番組にも多数出演。デイリースポーツの担当記者が故人を悼んだ。
圧倒的な最年少記録の数々、そして最年長記録、名人などタイトル8期…。「神武以来の天才」と称されるにふさわしい記録を残した加藤九段だが、やはりイメージとして大きいのは「将棋にエンターテインメントを持ち込んだ」という部分だろう。
「ひふみん」というポップな愛称に、親しみやすい風貌。とにかく底抜けに明るく、軽妙なしゃべりはお茶の間を引きつけた。将棋という、当時地味だった世界がワイドショーにまで紹介されるようになったのは、藤井聡太という究極の天才の誕生に加え、加藤一二三という“究極のスポークスマン”の存在が不可欠だったと思われる。
人並み外れた健啖家としても知られ、対局中に板チョコ8枚を平らげたという伝説も残っている。記者が取材した生涯最後の公式戦でも、夕食休憩直後に投了したにもかかわらず、夕食は天ぷら定食と唐揚げ定食、冷やしトマト(唐揚げ定食は後にキャンセル)を注文していたことには驚かされた。
引退会見では「将棋を文化遺産にしたい」と話すなど、将棋を愛し、食を愛し、そして自分自身を誰より愛していた加藤九段。取材で別の棋士について聞いていても、いつの間にか加藤九段自身の話になっていたこともしばしばだった。だからこそ、史上最年長まで現役を続け、引退後も将棋界の普及のため全国を駆け回り、テレビに出続けられたのだろう。さまざま残る伝説はすべて、その圧倒的な情熱から生まれたもの。全力で駆け抜けた人生に敬意を表しつつ謹んでご冥福をお祈り致します。(デイリースポーツ東京報道部囲碁将棋担当・福島大輔)
