ちびシャトル 壮絶過去も「お笑い」が「救いでした」アレルギー数値は成人男性の100倍 克服本「ぜひ笑って」
ゴーグルに全身タイツ。個性的な風貌の持ち主の芸人。名前はちびシャトル(33)という。一般成人男性の平均が170とされるIgE値(アレルギー数値)が1万5000と、約100倍の数値で、生まれつきアレルギー症状に悩まされた。その実体験を20日発売の「100倍アレルギー克服記」(太田出版)として書籍化。学生時代は毎日縄で腕を縛って就寝し、一時期は鶏肉、ごはん、グミだけの食生活も経験。そんな壮絶な過去を持つ33歳は、芸人という職業に救われたという。
奇抜な設定や自作のイラストが飛び出してくるなどのシュールなフリップ芸で、ファンの心をわしづかみにするちびシャトル。芸名通り身長147センチと小柄で、日光や汗にもアレルギー反応を起こす体質のため、炎天下でも長袖長ズボンの姿で取材場所に現れた。日傘は必須アイテムで、この時期は1日5度のシャワーが欠かせないが「不思議なんですけど夏が一番体調良くて」と笑う。ゴーグル&全身タイツの衣装も肌荒れを隠せる利点があり「いつでも人前に出られる状態」という。
生まれつきアレルギー体質に悩まされてきた。大豆や小麦、ハウスダストなど、反応するものは自らも数を把握できないほど多岐にわたる。約10種類にも及ぶ塗り薬や飲み薬を常用。アレルギー対応を徹底するあまり、食べられるものが鶏肉、ごはん、グミのみの時期もあった。
中学から高校までの時期が最も症状がひどかったといい、体をかかないように毎日親に両腕を縄で縛ってもらい就寝していた。「でもかゆみが収まらない限りは眠気は来ないので、この状態でできるのが腹筋だけだったので、本当に意識が無くなるまでして、気絶して寝てました」。何より「意識が無い方が楽」だったという。
そんな眠れない夜を救ったのが「お笑い」だった。「本当に学生時代はお笑いばかり見てて。見てる時だけが確実に(かゆみを)忘れられるので救いでした」。高校卒業後に就職するも一年で退職し、憧れだった芸人の道へ。「本当に好きなお笑いを続けるためにどう回復するかを真剣に考えたから、今回復してるのは絶対ある」。それまではアレルギーを気にせず食事していたこともあったようで、芸人を続けることを第一に、病状と向き合うようになった。
そんな壮絶な実体験をコミックエッセーの形で仕上げたのが「100倍アレルギー克服記」。内容と対照的に絵はポップに描き上げ「明るくしとかないと、見る方も大変な可能性もあるので」と苦笑し「芸人として書いてるのでぜひ笑ってもらいたい」と力を込める。
現在のアレルギー数値はおよそ5000にまで下がり、完治はないとされるが寛解の状態にあるという。「まだまだちょっと(数値は)高いんかい!っていうのはありますけど全然違います。今はかゆくなくて、荒れることも少なくなった」と笑い飛ばした。
苦しい経験を経て浮かぶのは「ただただまわりの人に感謝」という思い。「あとは芸人になって、笑ってもらえる『エピソード』に昇華された気がするので、本当に感謝が一番あります」。どんな薬よりも「笑い」が万能薬だと自覚している。
だからこそ、今後については賞レースに注力するとした上で「こんな経験をしても人を笑わせてる元気な姿を見せられたら一番良い」とうなずく。ゴーグルで隠れていても、その目線は確かに前を見据えている。
◇ちびシャトル 1991年10月1日生まれ。長崎県出身。0歳の時からアレルギー症状に悩まされる。学生時代は肌をかかないよう腕を縄で縛って就寝。食事が白米、鶏肉、グミだけの時期も経験。高校卒業後に一般企業に就職するも1年で退職し、芸人に。肌を隠すためゴーグルと全身タイツ姿で活動。「R-1グランプリ2023」準々決勝進出。身長147センチ。体重43キロ。足のサイズは22・5センチ。
