歌手の橋幸夫（８２）が中等度のアルツハイマー型認知症を患っていることが２０日、分かった。所属する「夢グループ」の石田重廣社長が都内で会見し、病の経緯と現状について説明した。認知症を公表し、芸能活動を続けるケースは極めてまれ。本人のメンタルの不安をとりのぞき、スタッフはもちろん、ファンら観客も橋の認知症を知った上で、見守り、応援していく。

　異変を感じたのはスタッフ。昨夏、「橋さんの言葉がおかしい」と指摘を受け、石田社長自身も、昨年８月、橋から「社長（夢グループ）２０周年おめでとうございます」と祝福されたが、数十秒後には同じ言葉を繰り返しかけられるなど、同じことを何度も繰り返す症状が出ていたという。

　今年１月から歌を忘れる症状も。認知症と診断され、医師からは「筋力を維持し、日常をキープして、芸能活動維持が望ましい」と助言された。４月、橋は「俺、歌うの？」と歌手であることすら忘れることもあったが、自分の曲が流れれば自然とステージに向かったという。

　橋から「頭の中がサッパリ分かんなくなっちゃうんだ。迷惑かけるから休むよ」と申し入れがあったが、何もしなければ悪化の一途をたどると考え、石田社長は芸能活動継続を決断。ファンに真実を伝えて活動する道を選んだ。

　橋は夢グループ２０周年記念コンサートに出演中で、２１日の神奈川県小田原市公演にも出演する。スタッフや家族の手助けによって「団体行動」でサポートしながら、仕事を続ける予定。石田社長は「橋幸夫さんを守りたい。橋幸夫さんの歌を通して、共感があって聞きたい方がいる。本人が歌う姿勢があって、嫌じゃない限りしてもらうことが大事じゃないでしょうか」と語った。