上岡龍太郎さんが貫いた「プロの客」の立場 引退後は芸能界と繋がらず
「探偵!ナイトスクープ」の司会などで人気を博した元タレントの上岡龍太郎さんが、5月19日に肺がんと間質性肺炎のため死去していたことが2日、分かった。81歳だった。
上岡さんは2000年3月、58歳の若さで芸能界を引退した。その後、03年には自著の出版記念会見を行うなど、時々姿を見せていたが、05年ごろからは、ほぼ公の場に登場しなくなった。
そんな折、06年4月に大阪市内のホテルで行われた落語家・桂ざこばの著書出版記念パーティーを取材した際、会場で上岡さんの姿を目にした。デイリースポーツ記者を名乗って取材を申し込むと、過去に弊社で連載を担当していた縁もあり、気軽に受けてくれた。
17年も前の話だけに、何を聞いたかははっきりと覚えていないが、引退から6年を経ても毒とユーモアを織り交ぜた“立て板に水”のトークだったのは確かだった。そして何より印象に残っているのは「『プロの客』を目指す」という言葉だ。
“お約束”のように、今後の芸能界復帰について訪ねた記者に「プロのタレントとしてステージに立つことは、絶対にありません」と明言。「僕はこれから『プロの客』を目指します。タレントとしての上岡龍太郎は、もういないんです」とキッパリ言い切った。
では「プロの客」とは何なのか。タレントではなく一私人となったことによる、生き方の“作法”の問題なのでしょうか…?と曖昧に問うた記者に、「まあ、いろいろやね」と笑いつつ、タレントはやり切ったが、まだまだ興味のあることはたくさんあり、それぞれに真剣に向き合いたいという旨の答えを残し「この辺で」と出席客の中に紛れていった。
言葉通り、その後に上岡さんが報道陣の前に姿を見せたのは、元相方・横山ノックさんや尊敬する立川談志さん、桂米朝さん、弟子だったテントさんの通夜、葬儀と、桂雀々ら近しい存在の落語会や出版パーティーのみ。その際にも「タレント・上岡龍太郎」ではなく「〇〇さんの知人・上岡龍太郎」という立場に徹した。戻ることが許されない立場ではなかったが、中途半端に芸能界と繋がることは、一切なかった。
死してなお、葬儀はごく限られた身内での密葬で行い、「お別れの会」の開催も強く固持していたという。これが上岡龍太郎という人間であり、「プロの客」として人生を終えたのかもしれないと、改めて痛感した。(デイリースポーツ・福島大輔)
