さいたま市内の住宅床下から６８歳の無職女性の遺体が見つかった事件で、埼玉県警は長男の妻で無職の渡辺美智子容疑者（５３）を死体遺棄の疑いで４月２９日に逮捕した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は１日に現地を取材した上で、デイリースポーツに対して、この事件の背景に潜む「違和感」を指摘した。

　逮捕容疑は、４月２２日頃から同２８日までの間、共同住宅１階の床下に女性の遺体を遺棄した疑い。調べに対し、渡辺容疑者は容疑を認めているという。だが、遺棄した動機や経緯などには不明な点も多く、県警では捜査を進めている。

　小川氏は「現場の住宅前や周辺を歩きました。報道では遺棄されていた現場が『アパート』となっていたが、１階と２階を両方使えるメゾネットタイプの家です。４～５部屋あって家族６人で住んでいます」と説明した。

　小川氏は「ご遺体で見つかった６８歳の女性は２２日にいなくなっている。おそらく、その日に床下に隠されたのだろうと思いますが、約１週間も不在でありながら、ご家族は警察等に届けていなかったようで、そこに違和感がある」と指摘した。

　その上で、同氏は「この家には、４０代の長男と長女、３０代の次女、２０代の孫の男性も住んでいて、容疑者となった長男の妻以外で大人が４人もいるわけですが、誰も『警察に届けよう』という話をしなかったのかという点で違和感がある。発見者は長男で、ご遺体の異臭などがあって見つけたのかなと思いますが…。現在は死体遺棄容疑ですが、警察は殺人罪も視野に入れて調べていると思います」と推測した。

　さらに、小川氏は「例えば、病死した人を遺棄しても死体遺棄容疑になります。だとしても、病気で亡くなった母親を遺棄する理由が見当たらない。そこを考えると、母親がいなくなって家族で探していた時に、今回、逮捕された長男の妻はどのような行動を取っていたのかが気になる。病気で亡くなった義母を床下に隠したというふうには思えない」とも推理した。

　現場では県警による捜査が進められている。小川氏は「まだ殺人事件と断定された訳ではありませんが、県警は事件性も視野に入れ捜査していると聞いています。殺人事件であった場合、アパート内が犯行現場になる可能性が強いと思われるが、室内犯行説を裏付ける証拠を得るために、具体的に室内のどの場所が現場であるか等、室内の尿反応、血痕、毛髪等、入念な鑑識活動を実施している」と解説した。

　今後の捜査ポイントについて、小川氏は「犯行現場の特定はもちろんですが、司法解剖による死因の究明、また動機が重要なカギになるでしょう」と指摘した。