小川紗良 主演映画「ビューティフルドリーマー」魅力は「人の距離の近さ」

インタビューに応えた小川紗良=東京・南青山
インタビューに応えた小川紗良=東京・南青山
主演映画「ビューティフルドリーマー」をアピールする小川紗良=東京・南青山
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 「踊る大捜査線」シリーズで知られる本広克行監督の最新作で、女優で映画監督の小川紗良(24)が主演した映画「ビューティフルドリーマー」が今月7日、公開された。本広、押井守、小中和哉、上田慎一郎という日本映画をけん引する4監督が結集した“監督絶対主義”を掲げる新映画レーベル「シネマラボ」の第1弾作品。その主演という大役を任された小川が、エチュード(即興)で作り上げられた本作独特の魅力や、本広監督の演出術を語った。

  ◇  ◇

 「ビューティフルドリーマー」は、完成できないいわくつきのシナリオの映画化に挑戦する大学映研部員たち(小川、神尾颯珠ら)を描いた作品。小川は、小川自身を思わせる監督のサラ役を演じている。本広作品では、大学のSF研究会を描いた「サマータイムマシン・ブルース」(2005年)、高校の演劇部を描いた「幕が上がる」(15年)に連なる青春映画だ。

 オファーは昨春だが、本広監督とは旧知の間柄だという。

 「本広監督は(ディレクターを務める)さぬき映画祭で、けっこう自分の学生時代の監督作とか出演作もかけていただいていて、そこで交流があったので、監督としての私も役者としての私も知った上で、オファーをくださったんだなって思って。役柄もそういう意味で、自分にあてていたような役だったので、うれしかった」

 映画の大きな特徴は「ほとんどエチュードで作られていったようなところ」だろう。小川はスタート地点をこう明かす。

 「企画をいただいた時、話の大筋はあるけど、細かいところまで想像つかないような状態だったので、どうなっていくんだろうという気持ちが一番大きかった。稽古期間を設けていだたいて、その時にエチュードをみんなで作り上げていったんですけど、わりと役者に委ねられていたのかな。(物語も)けっこうみんなで作っていったと思います。ほとんどそうなんですけど、オーディションのシーンなんかはホントにエチュードでしたね。役者の方が来ていただいて、そこでみんなで思いついたことをどんどんやるって感じでしたね」

  ◇  ◇

 小川自身、高校時代から女優、早稲田大学在学中から映画監督として活動している。映研の経験者から見て、映画で描かれる映研は「雰囲気はすごく似てた」という。

 「お金がなくなったりとか、物が壊れたり人がいなくなったりとか、そういう(映画で描かれた)珍事件みたいなものって学生の映画サークルでは起きがちなことで。部室のごちゃごちゃ感とかも似てますし、サークル全体の雰囲気は懐かしかったですね」

 若き映画監督としては、本広監督の演出を目の前で学ぶ好機でもあった。

 「本広さんはたぶん、演出というよりは役者さんにけっこう委ねる方だと思うので。ホントにカット割りとかをパパッと決めて、カメラの場所とか決めたら、はい、もうどうぞって感じでいましたね。ずっとニコニコされてました。キャスト陣がエチュードで煮詰まって、どうしたらいいか分からないとスタッフさんにぶつけてる時でも、本広さんだけはニコニコしていらっしゃった。どっしり構えた感じでしたね」

 こう振り返った小川は「常にニコニコしている方がいるだけで、最終的には明るく終われるんだなと思いました。どんなに現場が混乱していても、監督はブレずにいるって大事だなって」と笑う。

 エチュードをフィクションに落とし込む本広監督の作劇術についても「エチュードでやっている時は、ホントにリアルな会話というか、これがどういうふうに映画に回収されていくのか、大丈夫なのかなっていうくらいホントに自然にしゃべっていたんですけど。要所要所で劇中劇だったりとか、私が急にナレーションみたいなのをカメラマンに向かって読むシーンがあって。ああいうところでうまい具合に現実と夢が交差してる感じとか、フィクションの映画になっているところとかが、うまく作られていってるのかな」と、ポイントを解説した。

  ◇  ◇

 映画が撮影されたのは昨年6月で、もちろん新型コロナウイルスは影を落としていない。完成した作品を見た小川は「人の距離がものすごく近くて、近いからこそ生まれる事件とかがすごく笑えて、単純に見ていて楽しいというか、すごく癒やしの時間になったなっていうのを、率直に思いましたね」という感慨を抱いた。

 「映画撮影もサークル活動も、今は普通にできない状態だと思うので、そういう今の視点から見ると、図らずもすごく貴重な時間だったなと思います」としみじみ。

 本作の魅力を「人の距離の近さだと思いますね。距離の近さが生むおかしさみたいなものが、純粋に楽しい映画だと思います。映研部員のみんながすごく仲良くなって。エチュードが大変だったのを一緒に乗り越えたっていうのもありますし。撮影の合間もみんなでトランプやって遊び続けたりとか、撮影とか抜きにしてすごく仲が深まって、その空気感がそのまんま映画にでも出ていたと思うので、すごく良かったな」と訴えていた。

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