【夜回り先生・水谷修 少数異見】犯罪者とその作品 ピエール瀧の事件で思うこと

 「少数異見=3=」

 俳優でミュージシャンのピエール瀧こと瀧正則容疑者(51)が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されて以来、関わった作品と犯罪を切り離して考えるべきか否かという論争が起きている。教育家の水谷修氏は、その本質を踏まえて持論を展開した。

   ◇  ◇

 ピエール瀧氏が、コカインの使用で逮捕されました。哀しいことです。そんな中、薬物自己責任論を持ち出す人たちがいます。薬物乱用は、人からものを奪う行為でもなく、傷つける行為でもない。被害に遭うのは、自分だけ。だから、彼の出演した映画や彼が関わった楽曲には罪はなく、それを、放映停止や配信、販売停止にすることは、やりすぎだ。私は、この考え方は危険だと考えています。

 彼の作品を守ろうとしているたくさんの人たちに聞きたい。もし、彼の行った犯罪が、薬物乱用ではなく、殺人や強盗、強制性交など被害者が存在する犯罪だったら、どう考えたでしょうか。それでも、彼の作った作品には罪がない。守るべきだと言うことができたでしょうか。たぶんそうではないはずです。でも、日本の法律では、同じ犯罪なのです。

 こう考えれば、たぶん理解してもらえるでしょう。彼が使用したコカインなどの薬物は、当然暴力団等の反社会的集団から手に入れているはずです。そのために使った金は、当然暴力団等の資金となっています。しかも、日本国内だけでなく世界の反社会的勢力の活動を支えることになっています。これは、許されることでしょうか。

 どのような薬物であっても、乱用を続けるためにはお金がかかります。そして、乱用者にとって、薬物を手に入れ使用することは命より大切なことです。手に入れたお金は、薬物を買うために右から左へと使われていきます。家庭をもっている乱用者は、必ずといってよいほど家庭を破壊しますし、青少年の場合は、両親を追いつめ、時にはこのお金のために犯罪や売春に走ります。

 また、もし、彼の演技や音楽が、薬物の使用とその影響の中で作られたものだったとしたら、それを見たり聞いたりすることに何の意味があるでしょうか。そこには、本当の彼はいません。頭と心と体を薬物に乗っ取られた哀れな彼がいるだけです。そんな哀れな彼の作品を、見たいですか。聞きたいですか。彼を本当に守りたいのならば、それはすべて捨て去るべきです。

 確かに、歴史の中で俳優でもロックやジャズなどの音楽家の中でも、薬物を乱用し作品を残した人たちはたくさんいます。でも、そのほとんどは、それを自らの命で償っています。私は、彼にはそうなって欲しくない。

 罪は、償うことができます。まずは、彼は、自分の罪を償い、薬物依存症という病ときちんと闘い、そして、また、私たちの元に戻ってきて欲しい。薬物に汚され、自らを乗っ取られることなく、彼の本当の姿で、素晴らしい演技や音楽を私たちに見せて欲しいと考えています。そのためにも、今、彼を愛する人たちは、そっと待つことです。

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