シンガー・ソングライターの伊藤銀次（６６）と杉真理（６３）が、１１月３日から１２月２２日までツアー「トライアングルの軌跡」を行っている。４日・神戸チキンジョージ公演でツアーの前半を終えた２人が、ツアーに込めた大滝詠一さん（２０１３年死去）、村田和人さん（１６年死去）への思いを明かした。

　神戸で折り返したツアーについて、杉は「ふだん僕のライブ、銀次さんのライブに足を運ばない方も、いっぱい来ている感じがする。昔ライブに行ってたんだけど、久しぶりに来たっていう方もいるし。仕切り直しでもう１回、音楽と楽しもうっていう人が多い気がする」と言う。

　日本を代表するポップ・マエストロであり、伊藤は「笑っていいとも！」のテーマ曲「ウキウキＷＡＴＣＨＩＮＧ」、杉はサントリーウイスキーのＣＭソング「ウイスキーが、お好きでしょ」と、国民的楽曲の作曲者でもある２人。ツアーでは「自分たちの曲だけじゃなく」（伊藤）、親交が深かった大滝さん、村田さんの楽曲も歌われている。

　伊藤は「大滝さんの曲とかナイアガラの曲をやるのは、皆さんが感じ取ってくださって。そういう意味では広がりがすごくあってね。実際に前、大滝さんのファンの方が『君は天然色』（大滝さんの大ヒット曲）をライブで見られなかったと。大滝さん、あんまりライブをやってなかったでしょ。僕たちがそれをライブで歌っているのを見て『すごく感激しました』っていう話を聞いてね、杉くんと２人でやるこのライブって、ある意味があるのかなとすごく思うようになりましたね」と、ツアーの意義を説明した。

　伊藤は大滝さんに見いだされて大阪から上京、キャリアをスタートさせており、大滝さん、山下達郎（６４）とのアルバム「ナイアガラ・トライアングルＶｏｌ．１」を１９７６年に発表。杉は大滝さん、佐野元春（６１）とのアルバム「ナイアガラ・トライアングルＶｏｌ．２」を８２年に発表している。

　サマー・ソングに定評があったシンガー・ソングライターの村田さんとは、杉はユニット「アロハ・ブラザーズ」を１９９１年に結成。結成２０年目の１０年にファーストアルバム「世界のアロハ・ブラザーズ」を発表した。伊藤、杉ともども村田さんと共演する機会が多かった。

　１３年１２月３０日に大滝さんが急死し、翌１４年１月２日、杉が主催する正月恒例のライブ「杉まつり」で、２人は「君は天然色」を歌った。その後も大滝さんの楽曲を積極的に歌ってきている。

　伊藤は「ナイアガラの中だと、杉くんと僕は、そういう役割なのかなっていう感じがする。社交的っていうとおかしいけど」と、大滝さんの残した音楽をライブで伝えていく役割を自認する。

　杉は「大滝さんの（楽曲）って、やる方も敷居がわりと高いんですよ。だけど、あえてちょっとやろうと思って。見る人も敷居が低く見てほしいし、僕らも、クオリティーは崩さず敷居は低くみたいな感じで」と説明。

　伊藤は「大滝さんって少し神格化されちゃってね。大滝さんの曲って、うかつに何人も触れられないみたいなの（先入観）があるんだけど、誰が歌っても良い曲だしね。決して神棚に飾っておくようなものじゃない、大滝さんっていうのはね。みんなに親しんでほしいしね。それは僕らの音楽もそうだし。それがポップスっていうものなのかな」と、大滝作品に臨む心構えを、ポップス論も交えて打ち明けた。

　また、村田作品について、伊藤は「ホントにメロディーは永遠ですからね。その人の作った作品っていうのはね。村田くんの作った曲とか。村田くんには村田くんの、誰もマネできない色があって。それを僕たちはすごくリスペクトしているので、こういう形（ライブ）で伝えていって。村田くんのファンも今日、来てたね。そうすると、なんか村田くん生きてるな（と感じる）」と語り、杉は「歌の中に生きてますからね。大滝さんも村田くんも」とうなずく。

　伊藤は「みんなにすごく喜んでいただけていて、すごくうれしいですね」と、ツアーの手応えを語った。

　ツアーは１６日の東京・マウントレーニアホール渋谷、２２日の京都・都雅都雅公演で終了する。

　クリスマスが近づいているとあって、杉は「やっぱりクリスマスソング」と、セットリストの変更を予告。伊藤も「あまり各地方で曲が変わらないように、同じフォーマットで考えている」と前置きしつつ、「東京、京都あたりはちょうど折よくクリスマスなので、杉くんもクリスマスの曲いっぱいあるし、僕もあるから、その中から選んでやろうか」と同意しており、さらに楽しみが増しそうだ。