「新国立」着工遅れで… 過労自殺か 23歳男性月200時間超える残業の末

 2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場建設の地盤改良工事に従事していた都内の建設会社勤務で入社1年目の男性社員=当時(23)=が今年3月に自殺したのは、残業が月200時間を超えるなど過重労働が原因として、遺族が労災を申請したことが20日、分かった。

 新国立競技場は総工費膨張で旧計画が白紙となり、昨年12月に予定より1年余り遅れて着工、急ピッチで工事が進行中。代理人の川人博弁護士は会見で「作業日程が極めて厳しかった。国家的行事だからといって労働者の命が犠牲になってはならない」と強調した。

 男性は大学卒業後の昨年4月、都内の建設会社に入社、同年12月中旬から地盤改良工事の作業管理に従事した。今年3月2日、会社に「今日は休む」と連絡後、行方不明に。4月15日に長野県内で遺体が見つかり、遺書から自殺と判断された。

 会社は当初遺族に「残業時間は労使協定の範囲内だった」と説明したが遺族側が調査。失踪前1カ月で約211時間、2カ月前で約143時間の時間外労働が確認された。過重労働で精神疾患になり自殺したとし、7月12日に労災を申請した。

 建設会社は「心からおわびする。事実を深刻に受け止め、二度とないようにしたい」。元請けの大成建設は「労務管理は専門工事業者の責任。今後も法令順守の徹底を指導する」とコメント。発注元の日本スポーツ振興センターは「大成建設を通じ、しっかり管理するように伝えている。午後8時に作業員の詰め所を閉めるなどの対策を取る」とした。

 世界が注目する大イベントの陰に、過酷な労働があったのか-。「身も心も限界。このような結果しか思い浮かびませんでした」。男性の遺書には悲痛な叫びが記されていた。

 両親によると、昨年12月、入社1年足らずで現場の工事管理担当となった男性は「一番大変な現場になった」と漏らしていた。今年2月ごろには連日午前0時半~1時に帰宅。午前4時半ごろには起きて仕事に向かった。作業着のまま眠るようになり、友人には「今の職場に3年はいたいがもたない。辞めたい」と明かした。

 男性が携わったのは地盤改良工事。旧計画の白紙撤回で着工が遅れ、工期が限られる中「労働者には重圧があった」という。川人弁護士は20日、都内の東京五輪・パラリンピック組織委員会の事務所を訪れ、労働環境改善を求めた。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

芸能最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス