ケンブリッジ破顔V!五輪決めた

 「陸上・日本選手権」(25日、パロマ瑞穂スタジアム)

 日本最速を決める男子100メートル決勝は、ケンブリッジ飛鳥(23)=ドーム=が10秒16(向かい風0・3メートル)で初優勝を飾り、リオデジャネイロ五輪代表に内定した。0秒01差の2位に山県亮太(24)=セイコーホールディングス=が入り、2大会連続となる五輪代表が確実となった。桐生祥秀(20)=東洋大=は10秒31で3位に終わったが、派遣設定記録(10秒01)を突破しており、初の五輪代表に内定した。

 雨にぬれたトラックが、ナイター照明を照り返す。史上最高レベルとうたわれた100回目の日本最速決戦。光り輝く100メートルの直線をビクトリーロードにしたのは、ケンブリッジ飛鳥だった。

 怒とうの追い込みで山県と桐生の間を鮮やかに抜けだし、歓喜のフィニッシュ。「楽しかった。最初2人に出られるのは分かっていたので、最後に間を撃ち抜ければいいと思っていた」と、してやったりの表情で勝ち名乗りを上げた。

 昨年まではトップ選手の1人ではあったが、負傷も多く、桐生、山県らの陰に隠れ、どこか殻を破れないでいた。飛躍のきっかけをくれたのは、父の母国ジャマイカだった。14年のオフシーズンに短期留学。“人類最速の男”ボルトや、元世界王者のブレークが所属する最強クラブ「レーサーズ」の練習に1週間参加した。初日に言われたのは「なんでお前はそんなに細いんだ」。ボルトは不在だったが、ブレークら世界最強クラブの選手たちと練習し、“土台”の違いを実感した。

 帰国後、現在の所属でもあるドームのジムに通い始め、肉体改造に着手。ウエートトレーニングを本格的に導入し、体重は5キロ増加し、体脂肪は6%から4%台に。「今ならジャマイカでもオッと思われると思う」と、鋼の肉体を手にし、飛躍へとつなげた。

 日本人初の9秒台突入が期待された一戦。強い雨の影響もあり、文字通り“水”を差された形となったが、「勝ち続けていけば、そのうちタイムは出る。いつか9秒台を出したい」と、近い将来の突破を約束した。

 名前の飛鳥は、バスク語で「自由」を意味する言葉「Askatasuna」から名付けられた。勢いに乗って乗り込むリオの舞台。日本短距離界を10秒00の呪縛から解き放ち、“飛鳥時代”の到来を告げる。

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