大相撲の元大関２代目増位山の沢田昇（さわだ・のぼる）さんが１５日午後２時３８分、肝不全のため死去した。１７日に日本相撲協会などが発表した。７６歳。葬儀・告別式は近親者のみで執り行う。１９８１年春場所で現役引退後、同年名古屋場所から２０１３年九州場所までデイリースポーツ紙上の評論「三保ケ関親方　喜怒御免」を担当。美声の持ち主で現役時代の１９７４年に「そんな夕子にほれました」が大ヒットした。２０１３年１１月に日本相撲協会を定年退職後は歌手活動に専念していた。

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　「おぉ、久しぶりじゃない。ほら、協会にいた時にね、一緒に仕事してたんだよ」。協会を退職され、すっかり歌手になっていた親方の取材にうかがったのは２０１６年１月だった。ご家族や、周りの人にどんどん紹介していってしまうので、少し気恥ずかしい。それと同時に相撲担当から離れて年月がたっても気配りしてくれることがうれしかった。

　あの年代の“大相撲の親方”としては、珍しいと言っていいほど垣根が低い人だった。食事の席を設けた帰り際には「自分も使わせてもらうよ」と笑っていた。師匠を務めた三保ヶ関部屋の会合では自らマイクを持って美声を響かせることもしばしば。本番前の音響チェックやキー合わせの時の顔が、勝負審判を務めている時よりも真剣に見えた。

　人間くささは相撲の評論をお願いしている時も同じだった。稀勢の里が大関に昇進しようか、という時期だったと記憶している。その相撲ぶりを「外連（けれん）味がない」と表現されたので、「どのような所が外連味がないのですか？」と深掘りしてみた。返ってきた答えは「『外連味がない』は、『外連味がない』ですよ」。私は「稀勢の里は外連味がない」とするしかなかったように覚えている。

　そういう意味では増位山さんは“外連味たっぷりな人”だったのかもしれない。角界の不祥事についてなんかではなく、もっと人生の遊びの部分を、ゆったりとお話しさせてもらえたらよかったのにな。今になって考えています。（デイリースポーツ元相撲担当・広川　継）