阿部詩 兄・一二三敗戦にも動じず涙の5度目V パリ五輪後磨いた防御力発揮 「物語がまた始まった」3年後ロスへの一歩目

 女子52キロ級決勝でクラスニチを下し、5度目の優勝を決めた阿部詩(共同)
 銅メダルの兄・一二三と記念撮影をする阿部詩(共同)
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 「柔道・世界選手権」(14日、ブダペスト)

 男女計2階級が行われ、パリ五輪代表で女子52キロ級の阿部詩(24)=パーク24=が5度目の制覇を遂げた。決勝は同五輪銀メダルのディストリア・クラスニチ(コソボ)に一本勝ち。優勝5度は谷亮子の7度に次いで日本女子単独2位となった。男子66キロ級は武岡毅(26)=パーク24=が初優勝を果たした。日本勢は8大会連続の制覇。五輪2連覇の阿部一二三(27)=パーク24=は準々決勝で同級では19年8月以来の敗北を喫し、3位だった。

 この一戦に懸ける思いがにじんだ。52キロ級の決勝で勝利を決めた詩は両手を固く握った。目には涙が浮かぶ。昨夏のパリ五輪の悪夢から約1年。「阿部詩という物語がまた始まった」。3年後のロサンゼルス五輪へ力強く踏み出した。

 試練は序盤に訪れた。何度も死闘を演じたブシャール(フランス)と3回戦で対戦。シードから外れ、早い段階で強豪と当たるのはパリ五輪と同じだ。「そこを乗り越えてこそ、また強くなる」と念じて畳に立った。

 超攻撃的スタイルの隙を突かれて敗れた昨夏の反省から、磨いてきたのが防御。攻守のバランスを意識した慎重な組み手さばきで相手得意の肩車を封じ、延長戦で三つの指導を手堅く引き出す。担当の高市賢悟コーチは「全く隙を与えなかった」と進化を確信した。

 兄の一二三が準々決勝で先に敗れ、パリ五輪と逆の展開になっても「自分の試合に集中していた」と動じない。決勝はクラスニチを低い体勢からの背負い投げで一本。新たな技で締めくくり、日本女子の塚田真希監督は「アップデートしてきた成果を惜しみなく発揮した」とうなった。

 苦難から逃げずに再起へと挑み、表彰台の中央で笑みをたたえた。「まだまだ道は続くので、もっと頑張らないと」。まだ24歳。「お家芸」のヒロインにはさらなる可能性が広がっている。

 ◆阿部 詩(あべ・うた)2000年7月14日、神戸市出身。日体大卒。女子52キロ級。21年東京五輪金メダル。24年パリ五輪代表。世界選手権は兵庫・夙川学院高(現夙川高)3年時の18年に制し、19、22、23年も優勝。25年は全日本選抜体重別選手権で初優勝。男子66キロ級の阿部一二三は兄。世界ランキング18位。得意は袖釣り込み腰、内股。158センチ。

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