宇野昌磨が圧倒V あえて“新技”投入 時間オーバー減点でも2位と39・17点差
「フィギュアスケート・全日本選手権」(25日、東和薬品ラクタブドーム)
男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)1位で昨季の世界王者の宇野昌磨(26)=トヨタ自動車=がフリー191・28点、合計291・73点で3年ぶり5度目の優勝を果たし、日本スケート連盟の選考基準を満たして、3月の世界選手権(さいたま市)代表に決まった。SP2位の島田高志郎(21)=木下グループ=が2位、SP4位の友野一希(上野芝スケートクラブ)が3位だった。
異例の結末に、照れ笑いを浮かべた。宇野は最後のスピンの途中に、4分10秒の演技時間をまさかのオーバー。曲が鳴りやんでからのフィニッシュとなり、1点の減点となってしまった。
時間が延びたのは、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)-ダブルアクセル(2回転半ジャンプ)-ダブルアクセルの3連続ジャンプを入れたから。「曲にめちゃめちゃ遅れるのは覚悟していた」。今回あえて初投入した技だった。
世界王者の意地を見せた。冒頭の4回転ループを3・75点の加点がつく出来栄えで決めるも、続く4回転サルコーが2回転になり、4回転フリップで転倒。「前半失敗しているからこそコンビネーションを跳ばないといけないと思っていた」。後半には、4回転-3回転の連続トーループ、4回転-2回転の連続トーループと高難度の連続ジャンプを決めてみせた。
本番直前まで調子は良かった。当日の35分間の公式練習ではジャンプをほとんど跳ばなかったが、残り5分を切って4種の4回転を全て決めた。試合直前の6分間練習でも4種の4回転を全て降りるほどだった。
35分間の公式練習でジャンプをほとんど跳ばなかったのは前日にステファン・ランビエルコーチに「ジャンプだけにならないようにね」と注意されたからだった。「ショック半分、『これでいい?』みたいな」。“お伺い”は立てたが、「そのままでは跳べる気はしなかった」と、ジャンプも織り交ぜて調整。結果的にジャンプ全てを成功させることはできなかったが、宇野の熱演に会場は熱く沸いた。
2連覇がかかる世界選手権は日本開催。「数カ月の間だけどレベルアップすれば十分に優勝を狙える」。優勝にこだわりはないが、挑戦心は人一倍。フィギュア界をけん引する日本のエースが、再び世界の頂に挑む。
◆フィギュアスケートの世界選手権代表選考 各3枠の男女は全日本選手権優勝者が自動的に決定。2、3人目は全日本の2、3位やGPファイナル上位2人(女子は三原と渡辺)、全日本終了時で国際スケート連盟(ISU)公認のシーズン最高得点の上位3人などから選ぶ。女子で14歳の島田は年齢制限で対象外。アイスダンスは1枠で全日本の上位3組などから総合的に判断する。
◆宇野昌磨(うの・しょうま)1997年12月17日、名古屋市出身。5歳の時リンクで浅田真央さんに声を掛けられスケートを始める。中京大中京高から中京大に進学。18年平昌五輪で銀メダル、22年北京五輪ではシングル、団体とともに銅メダルを獲得した。16~19年全日本選手権4連覇。17、18年はGPファイナル、世界選手権ともに銀メダル。19年四大陸選手権金メダル。22年は世界選手権、GPファイナルともに金メダル。158センチ、55キロ。


