阿炎 28年ぶり巴戦制し涙の大逆転初V 3場所連続出場停止処分から改心

巴戦となった優勝決定戦で高安、貴景勝(左)に連勝し初優勝を決めた阿炎(撮影・佐藤厚)
「師匠には迷惑ばかりかけた」と涙ぐむ阿炎
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 「大相撲九州場所・千秋楽」(27日、福岡国際センター)

 平幕阿炎が28年ぶりの優勝決定巴(ともえ)戦を制し、初優勝を飾った。本割で2敗だった高安を突き倒し、関脇若隆景に勝った大関貴景勝と3人が12勝3敗で並び、巴戦に持ち込まれた。阿炎は高安、貴景勝に連勝して、優勝を決めた。3場所連続出場停止処分を受けてからの改心を最高の結果で示し、入院中の錣山親方(元関脇寺尾)に朗報を届けて男泣きした。3場所連続で平幕が優勝するのは初めてとなった。

 言葉に詰まり、にじむ涙を拭った。土俵下での初優勝のインタビュー。今場所を休場して入院中の錣山親方への思いを問われると、阿炎は「本当に迷惑しかかけてこなかったので、少しでも喜んでくれたらいいなと思います」と感極まった。支え続けてくれた師匠に、最高の恩返しを果たした。

 本割では高安との突っ張り合いを制して、最後は突き倒し。決定戦が決まると、頭をフル回転させた。普段からさまざまな力士を動画で研究。「高安関のも大関のも、頭の中にあった。しっかりイメージして臨みました」。続けざまの巴戦でも、冷静に戦略を立てて土俵にのぼった。

 最初の一番では、立ち合いで左に飛んで高安をはたき込み。貴景勝には、本来のもろ手突きの立ち合いから反撃を許さず押し出した。初めて十両優勝した17年秋場所でも4人よるトーナメント戦を経験し、その時も最初の一番は変化で勝利。肝の据わった戦略家の顔を、またも大一番で発揮した。

 2020年8月に、協会の新型コロナ対策ガイドライン違反が発覚して3場所出場停止。一時は引退も覚悟して改悛(かいしゅん)の日々を送る中、師匠にかけられたのは「迷惑をかけたんだから、しっかり稽古して返しなさい」との言葉だった。今場所中も毎晩メールでアドバイスが届いた。千秋楽の前夜には「気合の入った相撲をみせてくれ」のメッセージ。「それだけ意識しました。ちゃんと師匠が見てくれていると思って集中していきました」と絆を感じながら賜杯をつかんだ。

 家族への思いもあった。処分以降は部屋住みとなり、新婚直後から今春まで妻子とは別居。生まれたばかりの娘とも、たまに部屋のそばで10分ほど接することしかできなかった時期があった。子育てを一手に引き受けた夫人は「本当に頭が上がらない」という存在。優勝という最高にカッコいい姿を見せたパパは「早く会いたいですね。ずっと見ていてくれたと思う。一緒にいたい」と穏やかな笑みを浮かべた。

 右肘と左足首の手術による全休明けからのV。体の不安もなくなり、さらなる飛躍が期待される。処分から復帰後の成長を問われた阿炎は「こういう結果を出せたことが、一番の成長だと思います」。周囲への感謝を忘れず、まだまだ土俵から恩返しを続けていく。

 ◆優勝決定巴戦 本割の結果、相星の力士が3人いる場合に優勝を決定するための戦いで、連続して2勝した力士が優勝となる。出場する3力士が土俵下でくじを引き、その結果で取組が決まる。連続して2勝する力士が出るまで続けられる。今場所を含めて7回あり、最初の力士が2連勝して優勝したケースは3回(昭和40年秋場所の柏戸、平成5年名古屋場所の曙、今場所の阿炎)、もっとも取組数が多かったのは平成2年春場所で、最初の一番で小錦に負けた北勝海が、小錦に勝った霧島、続けて小錦を退けて優勝した。

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