福士加代子さん あの時いまこれから「衝撃のエチオピア合宿、彼らは体の動かし方を知っている」

 鴨川沿いをジョギングする小林祐梨子さん(左)と福士加代子さん※ジョギング撮影時のみマスクを外して撮影しています(撮影・北村雅宏)
 鴨川のほとりに座り対談する
2枚

 陸上女子1500メートル元日本記録保持者で2008年北京五輪代表の小林祐梨子さん(33)が、日本の女子中長距離界を約20年けん引し、1月の大阪ハーフマラソンで現役を退いた福士加代子さん(40)に現在の心境などを聞いた。京都市の鴨川沿いで汗を流した「ジョギング対談」では、何度転んでも立ち上がって完走した初マラソン、異例のエチオピア合宿など、レジェンドと呼ばれる福士さんの競技人生の秘話も飛び出した。

 ◇  ◇

 -2人の出会いは。

 小林祐梨子さん(以下、小林)「福士さんは覚えてないと思うけど、高校時代、アジア大会前の調整をしていた西京極(陸上競技場)のサブトラックを使われていて」

 福士加代子さん(以下、福士)「私が話しかけた?」

 小林「『めっちゃ、ええ足しとんなあ』って。私はうれしくて。実業団に行ってから福士さんが当時つけていたカチューシャをずっとつけていたんです」

 -どこに憧れた?

 小林「前向きさ、飾らないところ。ダメならダメと認めるところ。あと逃げないところ。ここ一番でかけているレースは、着実に獲りたい権利もある。そこで守りに入らず攻めるしかないと考えるのもすごいです。最初の接点は(08年)北京五輪ですよね」

 福士「(小林さんが)トランク一つを靴でいっぱいにして持ってきてたから、すげ~荷物、やべえなって。1回の練習で(靴底が)すごい減るから毎日1足って。確かに調整を見てたらバンと蹴るから、減るよね。バネがすごい。私はそこまで脚力がないから、瞬発派と瞬発力がない派」

 小林「今は、生活が一変しました?」

 福士「適当だよね。朝までネットフリックス生活。睡眠が少ない、お菓子しか食べてない。それで走ろうとしたら午前中で日射病みたいになって、午後倒れるみたいな」

 小林「現役時代、3000、5000メートルと距離を伸ばしたのは、日本記録で納得して次へとか、違う景色が見たかったとか」

 福士「1万メートルでは日本記録を出したかったけどなかなか出なくてしびれを切らして、練習でもうまくいかなくなって、やーめたとマラソンへ行った。相当やる気がない時にマラソンに行ったから、こんな練習はやりたくないって(当時の永山忠幸)監督ともバチバチになって。そんなこと言うなら出るな、そんなわけにはいかないと言い合って、1回目があんなこと(08年大阪国際女子で終盤に4度転倒して19位でゴール)になっちゃった。監督ごめんねって」

 -その後、2度優勝した大阪のハーフで引退。決断はどこで。

 福士「(退く)タイミングはいっぱいあったけど、東京五輪がちょうどいいなと。(五輪に)行っても行けなくても挑戦だけしてみよう。それで完全に終わろうと思って」

 小林「私はマラソンより1万メートルの五輪選考会(21年日本選手権、完走選手では最下位で5大会連続五輪が消滅)が衝撃的だった。あんなかっこいい最下位はなかった」

 福士「どこがかっこいいの、あんなの」

 小林「結局ワコールの2人(マラソンで一山麻緒=現資生堂、1万メートルで安藤友香)が五輪出場権を獲った。福士さんの志を全部受け継いだみたいでした」

 福士「いいチームだよね!ほんとに」

 小林「ワコールでは何度かエチオピア合宿に行かれましたね」

 福士「エチオピア人のコーチがいて、連れて行ってもらって」

 小林「異例のことですが、衝撃でした?」

 福士「あっちの大自然の中では、目が合うのが牛さんくらい。トイレもないので大自然の中でしちゃったり、自分がどこにいるのかわからなくなったり」

 -高地合宿地の米ボールダーなどとは違う。

 福士「全然違う。ボールダーは走るクリーク(筋)みたいなのがあるけど、エチオピアはない。あの人たちの目には“道”に見えるけど、私の目にはただの荒れ地。上手に走りやすいところを見つけて走るので、ついて行くとすごく気持ちいい」

 小林「何が違うんですか?」

 福士「本能的に走るし無理していない。後ろでマネして足だけリズムを合わせるとできるけど、私がコーチと2人でやるとなんか違う。彼らは体の動かし方を本能的に知っているから、無理なく走れる。年を取ってもずっと走れる。楽だもん、あの人たちの走り方」

 小林「最終的な理想は、そういう無駄のない走りに行き着くわけですよね」

 福士「そうじゃないともたないよね。あっちでは公園に何グループもいる。はだしの子とか、靴が片方しかないとか。長いブラウスを着て走っていたりとか。貧しくても走るのは誰でもできるから。そして、五輪に出た選手が、その子たちに靴などをあげる。選手たちは国のために頑張る。家族が多いから家族のために走る。生きる原点があるよ」

 小林「興味深いです。引退後のプランはあるんですか」

OLでバリバリ

 福士「全然ないの。ワコールでOLとしてバリバリ働こうかと」

 -指導者の道は。

 福士「指導者と言うのかどうかわからないけど、取りあえず(練習に)いていいよと言われてるくらいで」

 小林「福士さんは天才的なタイプだとずっと思っていたけど、すごく緻密で感覚を大事にされる。それを言葉にしてほしいです」

 福士「いやいや教え方がわからない。ただ、たまに講演とかあっても、今は自分の現役時の話しかできない。そっち(指導者)の世界を見てみて、何が見えるのかっていうのはあるかな」(11日に続く)

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