ワクチン別枠接種要請に選手戸惑い 「五輪特権」国内世論の批判と板挟み…葛藤を吐露

 国際オリンピック委員会(IOC)が東京五輪に参加する各国の選手団への無償提供を発表した新型コロナウイルスワクチン接種を巡り、開催国である日本の選手たちが8日、葛藤を吐露した。日本オリンピック委員会(JOC)はファイザー社から各国に配布されているワクチンとは「別枠」とし、日本選手団への接種を要請しているが、世論には「五輪特権」との批判もある。板挟みとなっている形の選手からは「国民を優先してほしい」「正直、怖さはある」などの声が上がった。

 開催に突き進む大会側と、反発する国内世論のはざまに立たされた選手は、思い悩み、葛藤していた。

 この日、五輪本番会場の有明体操場でテスト大会に参加した新体操日本代表の杉本早裕吏主将(25)=トヨタ自動車=は、ワクチン接種について、言葉を選びながら思いを吐露した。「ありがたいことではあるんですけど…、やっぱり国民の方々を優先してもらいたい」。ただ、JOCは国に選手団への接種を要請しており、個人の意思は尊重されるものの、正式に承認されればほとんどの選手が接種する流れになることは濃厚。「私たちはどうすることもできない。もし(接種)していただけるなら、感謝を忘れず五輪に向かっていきたい」と迷いもにじませながら語った。

 9日に国立競技場で行われる陸上のテスト大会を控え、前日会見に臨んだ女子1万メートル代表の新谷仁美(33)=積水化学=は、多くの海外選手が接種して来日する状況から「自分が打たないことで、周りに危険が及ぶなら打ちます」と、語った。ただ、副反応の報告も多く入っており、「正直なところ恐怖もあって。症状がどう出るか分からないので、打ちたくない気持ちはある」と、率直に明かした。「五輪特権」との批判には「アスリートだけが特別というふうな形で聞こえてしまっているのが非常に残念。命に大きい、小さいはない。優先順位をつけること自体おかしな話」と強く訴えた。

 男子100メートル前日本記録保持者の桐生祥秀(25)=日本生命=は「どういう発言をすべきか、迷っている自分がいる。意思をもって発言できるようにしたい」と話し、気持ちが定まっていないようだった。

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