国際体操連盟（ＦＩＧ）の渡辺守成会長（６１）は２９日、体操男子の五輪２連覇王者で、日米中露４カ国による国際交流大会（１１月８日、東京・国立代々木競技場）に出場予定の内村航平（３１）＝リンガーハット＝が新型コロナウイルスに感染したと発表した。無症状で今後、経過観察と複数のＰＣＲ検査を経て、出場の可否を決める。国内で現役五輪金メダリストの感染は初めて。合宿を行っていた五輪強化拠点である味の素ナショナルトレーニングセンター（ＮＴＣ）で選手の感染が判明したのも初めてで、衝撃が走った。

　ＦＩＧの渡辺会長によると日本選手、関係者はＮＴＣ合宿に集合した２１日と、１週間後の２８日にＰＣＲ検査を受けた。２１日の検査は全員が陰性だったが、２８日の検査結果がこの日夕方に判明し、内村に陽性反応が出た。日本選手はオンライン会見を行っていたが、内村は体調不良を理由に急きょ欠席していた。今後、行動履歴などを調査していく。

　大会へ向けさまざまなコロナ対策をとっていたが、人が少ない時間帯にコンビニや薬局に行く外出は許可されていた。内村は６日間の経過観察を経て、１１月４日にＰＣＲ検査を実施。翌５日にも検査を実施し、陰性なら本人の希望次第で大会に出場できる。合宿参加者は３０日に急きょ、ＰＣＲ検査を受ける。

　大会開催の方針は変わらない。今後、日本選手に感染が広がれば、日本チームの参加取りやめを検討。１１月４、５日に来日する海外選手で同様の事態が起これば、大会中止も検討する。渡辺会長は「（内村が）自分のために中止となれば、耐えられないと思う。それはできるだけ避けてあげたい」と話した。

　来夏の東京五輪についてコロナ禍での開催への懸念がいまだに残る中、今回の国際大会は国内外に開催可能をアピールする大きな試金石となるとみられている。渡辺会長も「誰かが先陣を切らないと」と話していた。

　それだけにホスト国の人気選手から感染者が出た衝撃は大きい。加えてここまで厳重な感染対策を施していたＮＴＣでの発生に、他競技への影響も懸念される。五輪関係者は「痛いどころじゃない」と吐露した。