伊調涙…自力五輪消滅「梨紗子が強かった」 可能性はわずかも階級変えずに練習続ける

 「レスリング・世界選手権代表選考プレーオフ」(6日、和光市総合体育館)

 女子57キロ級で、五輪4連覇の伊調馨(35)=ALSOK=は、リオデジャネイロ五輪63キロ級金メダルの川井梨紗子(24)=ジャパンビバレッジ=に3-3の同点ながら相手より高得点の決まり手が多いビッグポイントの規定により敗れた。川井梨が世界選手権(9月、カザフスタン)代表に決まり、同大会でメダルを獲得すれば来年の東京五輪代表に内定する。伊調は自力での五輪切符が消滅したが「(世界選手権の結果を)待つ立場」と、わずかな可能性に懸けて階級は変更せず練習を続ける考えを示した。

 五輪に愛され、前人未到の5連覇を目指した絶対女王が力尽きた。「今思うと(東京五輪が)4年前に来てほしかったな」。初制覇した04年アテネ大会から15年たち、気鋭の20歳だった伊調も35歳。ポツリとこぼした冗談が切なく響いた。

 五輪女王同士による史上最もハイレベルな代表決戦に敗れ、自国開催の東京大会出場を自力でかなえる可能性が消滅した。「本当に5連覇っていうものはなかなか手が届かない。そこまで行くには並大抵のものでは無理だなと実感する」。珍しく涙で声を詰まらせ無念さをにじませつつも、女王の気高さは失わない。「本当に悔しいが、やることはやったので悔いはない。自分が弱かったとは言いたくないので、梨紗子が強かった」とすがすがしく言い切った。

かすむ5連覇

 昨年12月から続く川井梨との4戦目はまたも手に汗握る死闘。勝ち名乗りを上げた川井梨も「私が勝ったの?」といぶかしがるほど、どちらが勝ってもおかしくない接戦だった。前半組み手でけん制し合い、第2ピリオドに入り1-1。残り1分となり伊調がタックルに入ったが、逆にグラウンドでポイントを奪われ2-3で残り30秒。果敢に前に出て場外ポイントを奪い3-3で並んだものの、規定により屈した。

 どんな劣勢からでも奇跡の逆転勝利を見せてきた伊調もブランクと加齢による肉体の衰えや試合勘の鈍化を隠せなかった。年明けからは両足首を相次いで痛めるなど満身創痍(そうい)。「毎日やっていたことをやらなくなった期間が長すぎるとこんな体になってしまう、こんな感覚になってしまうのか」とジレンマに苦しんだ。

 ただ、これで東京五輪出場の可能性が完全に消滅したわけではない。他階級へのくら替えについては「57キロ級で復帰すると決めたので」と否定したが、川井梨が世界選手権でメダルを逃せば自力五輪切符のチャンスも復活する。「自分で勝ち取って東京五輪の舞台に立ちたかったが、選手として、指導者としてレスリングに携わっていきたい思いは変わらない」。戦況を静観する形になっても、情熱の火は絶やさない。

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