【記者の目】吉田沙保里、現役引退 魂を削る戦場から“普通の女の子”謳歌

 レスリング女子で五輪3連覇を達成し“霊長類最強女子”と称された吉田沙保里(36)=至学館大職=が8日、現役引退を表明した。自身のツイッターで「33年間のレスリング選手生活に区切りをつけることを決断いたしました」と報告した。12年ロンドン五輪後には国民栄誉賞を受賞。レスリング界きっての国民的スターとなった第一人者がマットを去る。10日に都内のホテルで記者会見を行い、正式に報告する。

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 たまに練習マットに上がる際もカラフルなネイルと長いまつげが目を引いた。吉田は近年、芸能活動を中心に、長い競技生活で押さえ込んできた“普通の女の子”としての人生を謳歌(おうか)している印象だっただけに、魂を削るような戦場に戻る可能性は極めて低いと感じていた。

 最後の試合となったリオ五輪以降、体は細くなり見るからに筋肉量は減っていた。合宿でスパーリングをしても1~2本程度で休憩。「キツい」とあおむけで倒れ込む姿が目立った。

 タイムリミットも迫っていた。東京五輪に出場するには5月の全日本選抜選手権予選から勝ち進むことが絶対条件。同じく16年から休養していた五輪4連覇の伊調馨(34)=ALSOK=も、昨春本格的に練習を再開してから12月の全日本選手権で復活Vを遂げるまで約8カ月かかったことを考えると、吉田といえども五輪切符獲得は厳しい状況だった。

 第一線を走り続けていた時は私生活は二の次。父栄勝さんの教えは厳しく、幼少期にはピアノを習いたいとせがんでも「レスリングに関係ない」とはねつけられたこともある。昨年12月のイベントでは「いい人を見つけて結婚、出産と女性としての幸せもつかみたい」と話した。過剰なほどに気配りを絶やさない性格で、これまでは周囲のために突っ走ってきた。第二の人生は誰にも気兼ねすることはなく自分のために歩んでほしい。(デイリースポーツ・レスリング担当・藤川資野)

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