体操女子リオデジャネイロ五輪代表の宮川紗江（１８）が２９日、都内で会見し、練習中に暴力を受けたことを認めた上で、速見佑斗コーチ（３４）への日本体操協会の無期限登録抹消の処分について「納得できない」と軽減を求めた。また、協会の塚原千恵子女子強化本部長（７１）と夫の塚原光男副会長（７０）から「五輪に出られなくなる」などと圧力をかけられたことを明かし、パワハラを受けていたと逆告発した。宮川は速見コーチの指導継続を訴え、世界選手権（１０～１１月、ドーハ）代表候補を辞退する意向も示した。

　身長１４８センチの宮川が、覚悟のパワハラ逆告発だ。「まだ１８年しか生きていませんが、人生で一番勇気を出してここに立っています」

　まずは、速見コーチの暴力を認めた上で、パワハラではないと主張。頭をたたく、髪を引っ張るなどの行為を受けたが「カツを入れるためだった」「私が悪い」と受け止めていた。暴力は許されないとの認識を示しつつも「私は速見コーチと一から出直すつもりで、すべてをやり直し、再スタートを切っていきたい」。処分の軽減を訴え、そこに至る経緯をつまびらかにした。

　速見コーチによる暴力行為が７月中旬に発覚し、宮川は代表合宿が行われていた同１５日に塚原千恵子強化本部長と夫の光男副会長に呼び出された。千恵子強化本部長から「暴力の話が出ている。あなたが認めないと、あなたが苦しくなるのよ」「私なら速見の１００倍教えられる」などと言われたと証言。宮川が「家族と一緒にコーチを信頼してやっていきます」と答えると、「家族でどうかしている。宗教みたい。オリンピックにも出られなくなるわよ」と告げられたという。

　さらに、同２０日には千恵子強化本部長が女子監督を務める朝日生命体操クラブへの誘いを受け、「過去の暴力を理由に速見コーチを排除して、朝日生命に入れる気だと確信した」と話し、「速見コーチと私を引き離すために大きな力が働き、強化本部長が大きく関わっていたことは間違いない」と断言した。

　発端は２０１７年にスタートした千恵子強化本部長が主導する「２０２０東京五輪特別強化」プロジェクトだという。戦略が不透明だとして宮川が当初は参加を拒否したところ、ナショナルトレーニングセンターの利用制限などを受けたことを明かし、「オリンピックに出ても、言うことを聞かなければそういう仕打ちを受けてしまうのか」としか捉えられなくなったという。「何をされるか分からないという理由で声を出せない方々も多くいると思う。これこそが権力を使った暴力だと思う。体操協会にはこれらのパワハラの事実を素直に認めていただきたいと、私は強く願います」と主張した。