ソロバン勘定ではVライン80勝到達のカープだが…「予想」は下から読むと「うそよ」

 開幕投手を務めるエース大瀬良
 気迫あふれる投球を見せる九里
 2年連続の活躍が期待される森下
3枚

 元中国新聞記者でカープ取材に30年以上携わった永山貞義氏(72)がデイリースポーツで執筆するコラム「野球爺のよもやま話」。広島商、法大でプレーした自身の経験や豊富な取材歴からカープや高校野球などをテーマに健筆を振るう。

  ◇   ◇

 プロ野球ファン待望のペナントレースが幕を開ける。野球解説者、ならびに街の評論家諸氏は今、ひいき球団の順位予想の最終チェックにいそしんでおられることだろう。カープ番記者だった自身の話を持ち出せば、ご多分に漏れず、この恒例行事への対応には毎年、大わらわ。スポーツ欄への執筆はもちろん、小講演会などにも引っ張り出され、戦力分析などの予想をしたものだった。

 その頃、「予想は下から読むと『うそよ』という具合だから当たらない」との駄じゃれを得意とする先輩記者がいた。しかし、予想がいくら「うそよ」であっても、それには根拠がなくてはならない。かつてその目安となっていたのが投手陣の星勘定。主に先発陣の頭数と勝ち星を計算して予想すれば、「万馬券」になるほどの狂いはなかったはずだった。

 私自身のそれを振り返ると、カープの勝ち星を最大に見積もったのがV4を達成した翌年の1985年だったと思う。なにせ先発陣は北別府学、山根和夫、大野豊、川口和久、高木宣宏が5本柱を形成。リリーフ陣には小林誠二、津田恒美がいて、さらに川端順、白武佳久、金石昭人らの若手台頭も必至とみられていた年である。講演会などで「能力的には100勝できる投手陣。絶対に優勝」と吹聴していたが、終わってみれば、あえなくの2位。かくして予想は「うそよ」に振り替わったのだった。

 こんな予想は前年の成績を多分に参照にしているから、2位ぐらいの差異では赤っ恥までには至らないかもしれない。びっくりしなければならないとすれば、やはり3年連続の最下位から一変した75年のそれ。どうひいき目に見ても、「Aクラスが関の山」と誰もが予想したはずのチームが何と優勝したのである。

 このようなドラマの筋書きについては、哲学者の梅原猛氏が「野球戯評」(地球書館)の中でこう記している。「アリストテレスは急変がなければならぬという。つまり事態が幸運から不幸へ、不幸から幸運へと急激に変わる急変がなければ、劇は興味と情緒が失われるというのである」。この説を借りれば、不幸から幸運へと激変したこの年の活劇は、まさに「不朽の名作」だったといえるかもしれない。

 しかし、物事には上には上があるし、下には下があるものらしい。前年の最下位から優勝したこんなどんでん返しは1リーグ時代を含めた球史の中で7回ほどあったが、このうち60年の大洋はカープの下をいく6年連続の状況から一気に頂点を極めている。

 大洋の事例は西鉄から移籍した「魔術師」の三原脩監督が得意のマジックを駆使しての快挙だったといわれる。これに対してカープの75年版は外木場義郎、池谷公二郎、佐伯和司の3本柱によるローテーションの確立が大きな要因になった。それを数字で裏付けると、この3人が130試合のうち112試合に先発し、72勝のうち53勝。予想では誰もがこれほどの活躍を占えなかったからこそ、球界史上2番目の「大穴」になったのだ。

 時代が進んで現代の投手陣は、6本の柱が必要とされている。予想の基軸もまずその星勘定に目がいくが、幸い今年のカープは大瀬良大地、九里亜蓮、森下暢仁の3本柱が確立。さらに飛躍が期待される遠藤淳志、床田寛樹、中村祐太に加え、野村祐輔ら柱になり得る候補もいる。これらで55勝というのは見積もりすぎか。

 リリーフ陣を見るとこれが多士済々。新人の栗林良吏、森浦大輔、大道温貴の評判がいいし、塹江敦哉、ケムナ誠、島内颯太郎もいる。加えてフランスア、コルニエルにバード、ネバラスカスの外国人も控えているとあれば、駒の数では先ごろの3連覇時より豊富ではないか。これらにも計25勝のおこぼれがあれば、しめて80勝。優勝ラインに届きそうだが、このソロバン勘定は例によって「うそよ」になるのでしょうか。いずれにせよ野手の陣容と合わせれば、ここ2年間よりは期待してもよさそうな今年のカープ。少なくともBクラスだけは、よそうではありませんか。

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 永山貞義(ながやま・さだよし)1949年2月、広島県海田町生まれ。広島商高-法大と進んだ後、72年、中国新聞社に入社。カープには初優勝した75年夏から30年以上関わり、コラムの「球炎」は通算19年担当。運動部長を経て編集委員。現在は契約社員の囲碁担当で地元大会の観戦記などを書いている。広島商高時代の66年、夏の甲子園大会に3番打者として出場。優勝候補に挙げられたが、1回戦で桐生(群馬)に敗れた。カープ監督を務めた故・三村敏之氏は同期。元阪神の山本和行氏は一つ下でエースだった。

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