イチロー氏「プライドを持って」日本野球の発展願う ビデオ判定やデータ野球でタブレット浸透に 地元・名古屋で女子高生に完封14K
「KOBE CHIBEN8-0高校野球女子選抜」(31日、バンテリンドーム)
「SATO presents 高校野球女子選抜VSイチロー選抜 KOBE CHIBEN」が31日、バンテリンドームで行われ、米大リーグ・マリナーズなどで活躍したイチロー氏(51)=現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が率いる「KOBE CHIBEN」が高校野球女子選抜に8-0で勝利した。試合後にはイチロー氏の野球殿堂入り表彰式が開かれ、野球界の現状に“イチロー節”で提言。日本野球がプライドを持つべきと強く主張した。
日本の野球について問われると、イチロー氏の表情が一層引き締まった。ジョークを交えて笑顔でインタビューに答えていた口調は一変し、熱を帯びた。地元の名古屋で野球殿堂入りの表彰を受けた直後、“野球とベースボール”の在り方を提言した。
「アメリカの野球を追いかけているところもいまだにありますよね。ここまで日本の野球が成熟してきたわけですから独自の形があっていい。プライドを持ってほしい」
アメリカでベースボールの変化を間近で見てきた中、疑問を呈したのは審判に対する選手のリスペクトの姿勢であった。MLB、NPBともにビデオ判定が導入され、判定にリプレー検証を求めるのは今では珍しくない光景。イチロー氏は「審判がアウトと言っている。『いったん、(ベンチに)帰れよ』と僕は思う」と力説した。
ビデオ判定を求めることを非難しているわけではない。判定に不服を示すかのようにその場にとどまり、ビデオ判定の結果を待つ姿勢などは敬意に欠けることを強調。「判定を待ってまたダッグアウトから出ればいい。今、全員帰らないんですよ」ともの申した。
データ野球が浸透する中で選手がベンチでタブレットを見るのは当たり前となったが「iPadを見ている姿は見たくない」とピシャリ。MLBでは2023年からベースのサイズが大きくなり、塁間の距離が短縮。「触ってはいけないところを触り始めている」と厳しく言及し、MLBの後を追う日本野球の行く末を心配した。
今年で5年目となった高校野球女子選抜との試合は先発して9回1安打無失点、球数111球で完封した。最速135キロで14三振を奪い、七回2死まで無安打投球。打っても1安打と地元で躍動し「一生続けたい」と笑みを浮かべた。
「(女子野球のプレーを見ると)あらゆることに敬意がある。彼女たちと接して、そこを大切にしたい」。野球が変わりゆく今だからこそ、原点に立ち返るべき-。日本野球が誇りを失わずに発展していくことを願った。




