県岐阜商・横山 勇気と希望の同点打 左手指欠損ハンディ乗り越え「同じようなハンディを持つ子たちに」

  5回、横山は右前に同点適時打を放つ
 試合に勝利し、駆け出す県岐阜商・横山温大(中央)ら県岐阜商ナイン(撮影・中田匡峻)
 6回、日大山形・岩下の飛球を駒瀬と交錯しながら捕球する横山
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 「全国高校野球選手権・1回戦、県岐阜商6-3日大山形」(11日、甲子園球場)

 県岐阜商が日大山形に逆転勝ちし、2009年以来16年ぶりとなる夏の甲子園1勝を挙げた。史上11校目となる夏40勝目。生まれつき左手の指が欠損しているハンディを抱える横山温大外野手(3年)が同点適時打を含む2安打と存在感を示した。

 低い構えで力をためる。バットに添えた左手で押し込んだ打球は右前へ鋭く抜けていった。聖地に刻んだ初安打。横山には示したいことがある。

 「左手が負けないよう、最後までバットから離さずに押し込むことは意識しています」

 反攻の一撃だ。0-1の五回1死二塁。カウント2-1から変化球が多彩な相手右腕のチェンジアップに反応した。痛烈な打球は同点の右前適時打に。送球間に二塁も陥れ「何としても追いつくぞと食らいつけた」とガッツポーズ。八回には逆方向への一打も放った。

 生まれつき左手指が欠損している。それでも、兄と姉がプレーしていた野球の道へ進むことは自然だった。「親も周りの人も肯定してくれた」。バットを振り抜くために左打ちに転向。中学までは投手も兼任したが、打力を生かすために高校では野手に専念した。守備では右手にはめたグラブで捕球。瞬時にグラブを外して左脇に抱え、右手にボールを持ち替え送球する。「0コンマ何秒でも速くできるように」と何度も練習を重ねた。

 岐阜大会では全6試合に出場し計10安打、打率・526の活躍。交流サイト(SNS)を通じてハンディを抱える人からメッセージが来ることもあり「野球をやってきて良かった」と支えとなっている。「自分のような体でもできると証明したい。同じようなハンディを持つ子たちに勇気や希望を与えられる存在に」。人一倍重ねた努力が、夢舞台で誰かの背中を押す一投一打となっている。

 ◆横山 温大(よこやま・はると)2007年7月17日生まれ、18歳。岐阜県各務原市出身。170センチ、70キロ。右投げ左打ち。外野手。小学3年で緑陽スポーツ少年団で野球を始め、緑陽中では愛知江南ボーイズでプレー。県岐阜商では3年春からベンチ入り。50メートル走6秒2、遠投100メートル。

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