広陵が出場辞退 暴力事案に加え不適切行為疑惑複数SNS拡散で爆破予告など二次被害 中井監督調査終了まで指導外れる

 甲子園で熱戦が繰り広げられる中、激震が走った。第107回全国高校野球選手権大会に出場している広陵が10日、出場辞退を表明した。同校の堀正和校長が西宮市内で会見を開き、部内暴力に関する情報が交流サイト(SNS)で拡散して生徒への2次被害が生じ、大会運営にも大きな支障を来していることを理由に挙げた。7日に1回戦の旭川志峯戦を突破しており、不祥事による開幕後の出場辞退は大会史上初となった。2回戦は対戦予定だった津田学園の不戦勝となる。

 事態は収まるどころか、最悪の結末を迎えてしまった。大会史上初となる開幕後の不祥事による出場辞退。堀校長は会見の場に現れると、報道陣の前でしばらくの直立不動の後、「各方面の皆さまに多大なご迷惑ご心配をおかけした」と深々と頭を下げた。

 発端は1月に部内で発生した暴力事案。寮で禁止されているカップラーメンを食べた当時1年生の1人に対し、当時2年生の4人から頬をたたくなどの暴力行為があった。日本高野連は3月に審議し厳重注意処分としたが、従来の基準に則って発表はしなかった。

 大会直前、被害者の保護者のものとされるSNSの投稿が拡散。暴力の内容や学校側の対応に批判の声が集まり、反響の大きさを重く見た学校側と高野連は6日夜になって、経緯や処分済みであることを公表した。

 SNS上では事案が非公表だったことを「隠ぺい」と断じるなど騒動は過熱し、さらに1月の件とは別の事案で被害を訴えている元部員の情報が新たに注目された。これを受けて学校側と高野連は7日の1回戦・旭川志峯戦後に、別の事案について第三者委員会で調査中であることを発表。対応が後手に回る中、関係者への中傷や同校生徒を追いかけ回す事案、寮への爆破予告など2次被害が生じる事態に発展した。

 広陵は9日夜に臨時理事会を開催。理事を兼ねる中井哲之監督(63)も急きょ広島に戻り、最終的に監督を除く4人の理事で辞退を決議した。堀校長は「校長として生徒、教職員、地域の方々の人命を守ることが最優先と考えて判断した」と語り、他にも高校野球に対する信頼や、大会運営に支障を来すことを辞退の理由に挙げた。

 選手たちには9日夜に野球部長を通じて辞退決定を伝えられ、10日午前中には宿舎を出発して既に広島に戻った。「選手は失意のどん底だったと思う」と語った堀校長は責任を取って、兼務していた広島県高野連副会長の辞任を申し入れた。野球部の体制については抜本的に見直す意向で、中井監督は学校側の調査が終わるまで指導から外れる。SNSでの大きな反響が流れをつくる異例の辞退劇となった。

 【広陵を巡る騒動の経過】

 8月5日 SNS上で今年1月に広陵で暴力事案が発生していたという情報が拡散。学校側は当時1年生だった部員が部内で複数の上級生から暴行を受けたことを認め、今年3月に高野連から厳重注意措置を受けていたと公表した。当該部員は転校。その後、7月に被害届が提出されたことも明らかになる。

 6日 広陵が調査結果を含めた詳細な経過を公表。高野連も大会出場判断に変更なしと発表。

 7日 広陵が1回戦の旭川志峯戦に3-1で勝利。試合後、高野連と大会本部は1月の事案とは別件で、元部員から被害を訴えている情報提供があったと発表した。学校側は調査の結果、事実確認ができなかったと説明。その上で第三者委員会を設置し、現在調査中であると明かす。

 8日 阿部文部科学相が閣議後の会見で広陵の暴力事案について「大変遺憾で、決して許される行為ではない」と述べる。

 10日 広陵が出場辞退を発表。

 ◆広陵 広島市にある1896年創立の私立校。野球部は1911年に創部され、広陵中時代の23年夏に甲子園初出場した。春夏通算53度の出場を誇り、センバツは26、91、2003年の3度優勝。準優勝も3度で夏は準優勝4度。主なOBは金本知憲(元阪神監督)、上本博紀(元阪神)、小林誠司(巨人)、野村祐輔(広島3軍投手コーチ)ら。

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