「ファンにいかに満足していただけるか」 NPB榊原新コミッショナーにインタビュー

 プロ野球の榊原定征新コミッショナー(79)がこのほど、デイリースポーツなどの合同インタビューに応じた。大手化学企業・東レ株式会社の取締役社長などを歴任し、経団連会長も務めるなど、企業経営の豊富な経験、手腕を持つ新コミッショナーが、事業拡大を求められるプロ野球のかじ取り役を担う今後への思いなどを語った。

  ◇  ◇

 -新コミッショナー打診の時の感想は。

 「本当にびっくりしたんですけどね。野球ファンですし、非常に光栄ですけども、その時点ではいくつかの会社の社外取締役とかがあった。物理的にできませんと、それが最初のリアクション。ただ大変に名誉あるお話なので『よく検討します』と申し上げた」

 -受諾への経緯は。

 「その後に話し合う中で、ある程度の兼職をした上で、適切なスタッフを何人か指名してチームで対応することもどうですかとアドバイスをいただいた。そういったステップがあって、5月下旬にお受けしますとお返事を差し上げました」

 -野球界に何かしたいという思いが強い?

 「そうですね。子どものころから野球ファンですし、今のプロ野球の状況についてはいろんな問題意識、課題は私たちなりに持っている。私の経験とか人脈の中で貢献できるのならばやってみようといった考えです」

 -榊原コミッショナーにとって野球との関わり合いは。

 「これまで半世紀、経営の現場に身を置いてきたわけですが、プロ野球は常に身近な存在でした。応援するチームが勝てば幸せな気分になるし、負ければあまりうれしくない。私の人生で重要な役割を占めていたと言えると思います」

 -子供の頃から親しんできたスポーツ。

 「私の子どものころは広場があれば三角ベースをしたり、ソフトボールをしたり。毎日、泥んこになって野球をやっていた。野球選手は憧れの職業ナンバーワン。近年、プロスポーツの多様化が進んで野球以外のスポーツ人気も高まっている。野球の相対的な関係も昔と変わってきていると思います」

 -野球界の課題は。

 「人口が減っているので(競技人口も)全体に減少傾向にあるんですけど、野球の減り方が他のスポーツに比べて大きくなってきている。ファンあっての球団、ファンあっての選手です。ファンにいかに満足していただけるか、これが重要な課題だと思います」

 (続けて)

 「球団経営という目線でMLBとNPBを比較してみますと、人口は米国が約3億3000万、日本は約1億2000万。球団の数が米国が30球団、日本が12球団。入場者数は米国が大体年間7300万人で日本は約2000万人で(すべてが)ほぼ3対1。では、事業規模はどうかというと米国は約1兆5000億円、日本は2000億円くらいと10対1の状況なんです。これから勉強しなければいけないが、米国式のやり方を参考にして事業拡大ができるのでは…ということを考えています」

 -女性や子供のファンを増やす点は。

 「球場に来ている人を見ると、やっぱり女性、若い人の比率が少ないんじゃないかと思うんです。そういったところに問題意識を持ち、焦点を絞って増やしていく。そのためにスピードや、迫力のある(試合)というのを提供することがベースだと思います」

 -ファンの拡大のために野球くじ導入は考えているか。

 「少なくとも米国であるようなベッティングはやらないというのが基本的な原則です。しっかりサッカーとかの事例を勉強したいと思いますが、日本には独特の文化と美学があり、欧米のような賭けの対象となるのは基本的に避けていくべきと思います」

 -今もフルタイムで働かれているモチベーションの源は。

 「自分の力を発揮できるのであれば貢献したいという意識は強いですね。そこに喜びとか自己実現とか、社会貢献できている満足感もあります。そうしたことがモチベーション。だから、このプロ野球の仕事は私にとって好きなことに貢献できる。こんなにうれしいことないですね」

 ◆榊原 定征(さかきばら・さだゆき)1943年3月22日生まれ。79歳。愛知県出身。名古屋大学大学院を経て67年に東洋レーヨン(現東レ)に入社。経営企画室長、技術センター所長などを経て02年に東レ代表取締役社長、10年に代表取締役会長に就任。14年からは経団連会長も務めた。20年からは関西電力の取締役会長に就任。同年には旭日大綬章を受章した。

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