残塁数12球団最多“あと一本”に泣いた楽天 奇策ににじむ石井監督の苦悩

 担当記者が自軍の今季を総括する企画「21年あの瞬間」第4回。開幕前は田中将の復帰に沸き、ソフトバンクと並んで優勝候補に挙げられていた楽天。しかし爆発的な勢いを欠き、3位に終わった。異例のGM兼任としてタクトを振るった石井一久監督(48)の采配を振り返る。

  ◇  ◇

 監督・石井一久はユーモアあふれる言動とは裏腹に、すさまじく細かかった。指揮官を一番近くで支えてきた真喜志ヘッドコーチは「あの体、表情からは想像できないと思うが、走攻守全てにおいて細かいところまで見ている」と感嘆の声を上げる。

 その細かさが強調されたのが6月6日・広島戦(マツダ)。七回に2者連続初球スクイズを成功させた場面だ。「作戦について雄弁に語りたくはない」とした指揮官だが「札幌ドームだとやってなかった」と後日、明かした。天然芝で打球が勢いを失いやすいマツダスタジアムと、人工芝で打球が転がりやすい札幌ドーム。グラウンド状況にまで気を使って作戦を瞬時に出すあたりに真喜志ヘッドの言う「細かさ」がにじみ出ていた。

 一方でこの奇策はある種、チームの課題に対する“苦肉の策”だったようにも見えた。今季のチーム残塁数は12球団最多の1085。チャンスを作ってもなかなか得点にまで至らない。指揮官はシーズン中、何度も「走者のセットアップはできている」と前を向いてきたが“あと一本”に泣く試合は続いた。

 今季は投手陣が安定。特に中継ぎ陣は安楽、酒居、宋家豪がフル回転し、救援防御率は昨季のリーグ5位から1位に躍進した。それだけにチーム得点圏打率や外国人助っ人野手の不発など攻撃面での課題が際立ってしまった印象だ。

 そんな中、GM・石井一久は10月のドラフトで素材型野手を上位で立て続けに指名。リーグ制覇、課題克服に向け「監督(の立場)で言えばバリバリの即戦力10人が欲しい」ところをグッと我慢して、将来を見据えた補強に踏み切った。長期的な視点が必要なGMと、短期的な結果が求められる監督-。考え方が衝突する2つの役職を兼務する異例の体制は2年目を迎える。今季の経験をどう生かすのか、その手腕に注目が集まる。(楽天担当・畠山賢大)

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