鳥取城北・坂上 大病乗り越え凱旋 あと1人から悔しいサヨナラ負け

 「高校野球交流試合、明徳義塾6-5鳥取城北」(10日、甲子園球場)

 中止となった今春のセンバツ出場校32校が招待された「2020年甲子園高校野球交流試合」が開幕した。第2試合では鳥取城北の左腕・阪上陸投手(3年)がサヨナラ打を浴びて明徳義塾に敗退。悔いが残る結末となったものの、中学2年時に患った病と戦い続け、一度は新型コロナウイルスの影響で途絶えた甲子園でのプレーが実現。夢がかなった一日でもあった。大会は17日まで開催される。

 天をあおぎ、うつむき、阪上が崩れ落ちる。黒土がかすんで見えた。勝利まであと1人からまさかのサヨナラ負け。「この大舞台で力を出せなかったのは本当に悔しい」。悔しさで目を腫らしたが、一度は途絶えた甲子園は最高の場所だった。

 「野球は最後まで怖いという厳しさと。それ以上に最高の場所で、過去のしんどいこととかを吹き飛ばしてくれる場所でした。小さいころからの夢でかなえたかった夢なので」

 出番は七回から。3人で抑えると、八回の攻撃は先頭で内野安打で出塁し、4得点を導く。九回は右翼の守備に就き、2死一、二塁のピンチで再びマウンドに戻ったが…そこで右翼越えサヨナラ打を浴びた。「恩返しできなかったのは悔しい」。思いの強さの分だけ自分を責めた。それだけの理由があった。

 「最近、甲子園前からそういうことを思い出すようになって…」

 中2の冬、左手親指を骨折した際、処方された薬が合わず腎臓の機能が低下。「尿細管間質性腎炎」を発症した。「野球ができないと言われて。車いすでトイレも自分で行けずずっと寝たきり。絶食の期間もあって」。約3カ月の入院生活。体重も20キロほど落ちた。予定していた大阪の高校の進学もかなわなかった中、鳥取城北の山木博之監督(45)が迎えてくれた。

 「『ハンディがあっても』という話をいただいて。僕の体の面も理解して下さって、ここで必ず甲子園をと」

 高校入学後も、月に1度の大阪への通院も認めてもらった。今は回復して投薬治療も終了。自分だけでは病に勝てなかった。背負った思いがある。

 「入院している時に僕より小さい子が、もっと何カ月も絶食して『お腹がすいた』と言っていて。そういう人たちに、こんな僕でもできたんだ、というのは届けられたかなと」

 小学6年時、タイガースジュニアの一員で汗を流した甲子園。スタンドには両親の姿もあった。「オヤジとオカンに電話して『今まで野球をやらせてもらってありがとう』と」。卒業後も野球は続ける。夢があったからここまで来られた。甲子園と、支えてくれたみんなへ。ありがとう。今はこの思いしかない。

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