責任感の強い男 明石商・重宮「やりきったので涙はない」

 「全国高校野球選手権・準決勝、履正社7-1明石商」(20日、甲子園球場)

 最後まで誇り高く、気丈に振る舞った。「やりきったので涙はないです」。3番打者として2季連続の4強に導いた明石商(兵庫)主将の重宮涼内野手(3年)の言葉には悔しさよりも充実感がにじんだ。

 新主将となった昨秋、チームは順調すぎる船出を切った。昨夏の甲子園メンバーが新チームの主力として在籍。勢いそのままに連戦連勝を飾った。一方で、チーム内は慢心した雰囲気に包まれていった。基本的な練習もおろそかにするなど緩慢な姿が目に付いた。「このままだと甲子園に行けない」。重宮の危機感は募っていった。

 野球への取り組み方を巡り何度もチームメートと対立した。数え切れないほどの口論を交わしたが訴えも届かず、ついに「自分はこのチームをまとめる自信がない。主将をやめたい」。部員全員を前に思いをはき出した。

 責任感の強い男が口にした初めての弱音に皆が目を覚まし、次第に一つにまとまった。「人任せではなく、一人一人が率先して行動するようになった」と重宮。苦悩を乗り越えて、つかんだ夏初の4強。悔いなど残るはずがなかった。

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