元ロッテの渡辺俊介が受け継ぐ思い~社会人都市対抗野球

 奇縁か運命か-。時を越えてつながる思い。そんな瞬間を垣間見た。6月5日。都市対抗野球予選・南関東第2代表決定戦の新日鉄住金かずさマジック対JFE東日本。1点ビハインドの八回から、新日鉄住金のマウンドには、元ロッテの渡辺俊介投手兼任コーチ(39)が上がっていた。

 試合の経過を振り返る。新日鉄住金の先発は若きエース右腕・玉井。だが二回に2点の先制を許すと、味方が5点を挙げて逆転に成功した直後の三回、先頭からの5連打を浴びて降板。2回0/3を6失点の乱調だった。

 渡辺が登板したのは互いに点を加えて迎えた終盤戦。「相手もエースの幸松が出ていた。相手よりもいい投球をしようと、気合が入りましたね」。ベテランには試合の流れを変える働きが求められる。その姿に、以前に聞いた話を思い出した。

 「今でも恩田さんには頭が上がらない。恩田さんがいなければ、今の自分はないから」

 16年前の2000年、同じ都市対抗野球予選・南関東第2代表決定戦で若きサブマリンは先発の大役を担った。だが、三回途中5失点で無死満塁の走者を残し降板。2番手で登板したのが、ベテランの恩田寿之投手だ。

 恩田投手は後続を三者連続三振に打ち取り、チームも都市対抗出場を決める。窮地を救われた渡辺は本大会で先発に、抑えにとフル回転で4強入りに貢献。同年のシドニー五輪に出場し、秋にロッテからドラフト4位指名を受けた。その後の活躍は…あらためて語る必要はないだろう。

 現在は引退して社業に就いている恩田氏は、渡辺の人生を照らし出した恩人と言える。

 16年後の決戦-渡辺は6回無失点の快投でチームも延長十三回サヨナラ勝ち。都市対抗本戦への切符を手にする。今度はベテラン・渡辺が、KOを喫したエース右腕を救った。

 「疲れましたね」。そうして話をしながら何度も座り込んだ。これほど疲労感を漂わす姿を、そしてこれほど充実感に満ちた顔を見た記憶がなかった。

 「16年前は僕も打たれたけど、ベテランの人がカバーしてくれた。だから今日は僕がカバーしてやろうと。彼らに東京ドームの舞台で投げてもらえるように」。そして「意地ですかね。ここに戻ってきたというね」と少し照れ笑いを浮かべた。

 玉井は試合後、リリーフで登板した全員に頭を下げて回ったという。そんな姿に鈴木監督は「競争なのでどうなるか分からないが(本大会で)勝たせてあげたい。先発で使ってやりたいですよね」と話した。16年前と同じく、ベテランに救われた若きエースが本大会で躍動を見せ、次のステージへの扉を開くのか…。そんなストーリーも楽しみの1つだ。

 「マウンドでの重圧はすごいですよ。社会人は勝たなければ意味がない。負ければ得られるものはないんですから」と渡辺は言う。一瞬にすべてを懸けるからこそ生まれるドラマ、受け継がれる思いがある。都市対抗野球本戦は15日開幕。新日鉄住金は18日に初戦を迎える。熱くたぎる「大人の甲子園」。間もなく、その幕が開く。(デイリースポーツ・中田康博)

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