「広島２－７阪神」（１８日、マツダスタジアム）

　届くのか、切れないのか。阪神・大山が流し打った打球は右翼ポールへ向かって、風にも乗って伸びていく。白球はフェンスの数センチだけ上を越え、スタンドに届いた。「後ろにつなぐ意識を持って、自分のスイングを心がけました」。１３４試合目での１０号２ラン。節目の数字に到達した。

　２点リードの七回２死一塁。フルカウントからハーンの１５５キロ直球をはじき返した。弾丸ライナーで右翼席の最前部に着弾。「追加点につながる結果になって良かったです」。この一発で４点差。今季最後の広島戦で勝利を決定づける、価値ある一打にもなった。

　これで入団２年目の２０１８年から８年連続で２桁本塁打に到達。藤村富美男に並んだ。球団史上８人目、球団生え抜き選手では岡田彰布に続き、史上６人目の記録。球団史に残るホームランバッターの仲間入りを果たした。

　１７日には大阪での優勝パレードが正式に決定した。大山には忘れられない景色がある。２年前のリーグ優勝では大阪の御堂筋と、神戸の三宮で優勝パレードを開催。甲子園でも満員のファンを見ているが、沿道に集まる計６５万人の姿に心を打たれた。

　「感動しましたし、それだけ望まれているってことなので」。普段は味わえない経験をしたからこそ、次世代にも継承していきたい。「まだ知らない選手たちもいる。そういう選手たちにも味わってもらいたい。それを味わってもらうことで、これからの野球人生、また変わってくると思うので」。後輩たちを背中で引っ張り続ける男の思いがあった。

　２試合連続で、今季３度目の４番起用。佐藤輝のコンディション不良でチームの軸を任される形になった。かつての定位置とあって、何の違和感もない。どの打順を任されようと信念は一つだ。「チームが勝つことが一番。残り試合も少なくなってきているので、しっかり１試合１試合を大事にして、やりたいと思います」。最高のナインとまだまだ喜びを分かち合いたい。