「巨人１－１０阪神」（５日、東京ドーム）

　東京ドームに響き渡る快音がスタンドインを確信させた。長い滞空時間できれいな弧を描き、オレンジに染まる右中間席へガツン。阪神・佐藤輝明内野手が少年少女へ夢を届けた。「子どもたちにいいところを見せられたんじゃないですか。良かったです」。１３安打１０得点。豪快な一発で今季初の２桁得点を生み出した。

　７－１の九回。もう勝利は目の前だった。だとしても、攻撃の手は緩めない。“野球は２アウトから”。少年野球で口酸っぱく言われる、野球の格言だ。最後まで諦めない。最後まで気を緩めない。その姿を体現した。

　無死二、三塁。堀田の初球１４７キロ直球を振り抜いた。バットを高々と掲げて、圧巻の１１号３ラン。「しっかり狙いを絞って、一発で打てたんでそれは良かったなと思います」。今の佐藤輝に甘い球は通用しない。森下との今季初アベック弾は、１日の中日戦（バンテリン）以来４戦ぶりの一発。本塁打と打点を争う岡本の前で、１１号＆３１打点の独走態勢に入った。

　六回２死一塁でも右翼線二塁打。これで「こどもの日」は５年連続安打となった。２年ぶりのアーチで通算は１９打数７安打、打率・３６８、２本塁打、７打点。「見てる子に喜んでもらえたかなと思います」と振り返った。

　オフには野球教室を開き、地元・兵庫県西宮市の子どもたちと時間を共有した。目線を合わせて、優しく積極的にコミュニケーション。「スポーツは楽しむもの。プロ野球を目標にしてくれるとうれしいです」。この日も多くのキッズたちが佐藤輝のようになりたいと憧れたことだろう。

　絶好調のバットから快音が止まらない。４月２９日の同戦から７試合連続安打。５月は５試合で２２打数９安打、打率・４０９、２本塁打、７打点と皐月（さつき）男にもなっている。チーム３１試合目で３１打点となり、シーズン１４３打点ペース。セ界で一番怖いバッターに間違いない。「また明日勝てるように頑張ります」。６日は振り替え休日。ＧＷ最後の休みも大暴れする。