なぜ?阪神・佐藤輝 リーグトップの7本塁打の理由 逆方向アーチ量産!年間56本のハイペース
阪神・佐藤輝明内野手(26)がリーグトップの7本塁打をマークしている。まだ18試合とはいえ年間56本のハイペース。球団生え抜きでは84年の掛布雅之以来、41年ぶりとなる本塁打王の誕生へ期待が高まるが、今季のアーチの特徴が逆方向への量産。20日・広島戦(甲子園)での2発は、いずれも中堅よりも左だった。逆方向への意識と球場にフィットした打撃が、タイトル獲得へのカギとなりそうだ。21日の移動日を挟み、22日のDeNA戦(横浜)からも期待がかかる。
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20日・広島戦では初回に先制の6号2ランを放てば、五回には勝機をグッと高める7号3ラン。いずれもバックスクリーンの左へと放り込んだが、佐藤輝が見せる今季の進化が凝縮されていた。昨季は本塁打16本のうち、中堅より左翼方向は5本で31%。それが今季は7本中5本で71%と大増量を果たしている。左方向へ飛ばせる要因について、和田1・2軍打撃巡回コーディネーターは「野球脳が備わりつつある」と指摘する。
「やっぱりいろいろ考えながらやってるよ。球場によって、というのもあるしね。それを練習の時からやっている」
20日の2本目は浜風にうまく乗せてのオーバーフェンス。“左打者の天敵”と対立するのではなく、甲子園特有の風をうまく利用した。球場にフィットした打撃が、結果につながっている。
5日・巨人戦で東京ドームの左翼スタンド最前列に着弾させた一発も、その最たる例だろう。和田コーディネーターは「東京ドームだったらアレで入るという感触も(つかんだ)」とうなずく。
佐藤輝自身は“球場別打撃”について「(狭い神宮や東京ドームでは)気持ちの面も大きいと思いますけどね」と認識する。グラウンドのサイズに風の有無と、球場によって外的影響は異なるが、「打ち方は変えてないんですけど。意識の問題?うん、ありますね」と明かした。
「やっぱり甲子園というのは、なかなかチャンスが少ないので。かといって、単打を狙ってばかりじゃダメなんで」と胸に刻むスラッガーの矜持(きょうじ)。オフの自主トレでは、「もう一回、広角にというのは意識して。引っ張りだけじゃ、甲子園では無理なんで、逆方向にも課題を持ってやってました」というだけに、今季に向けた準備が奏功している。
和田コーディネーターも佐藤輝の逆方向への意識向上を歓迎。「甲子園で彼のパワーは浜風を押しのけるだけのものは持ってるけど、そっち(左翼方向)へも放り込めるからね。そうなってくると、幅が広がってくる」。逆方向へ打球を飛ばすには、ボールをよく見て引きつける必要がある。それだけに、「逆方向へ打ち出すと、低めの球を振らなかったり、いろいろ良いことが出てくる」とメリットも生まれる。
逆方向量産の伏線は昨年の秋季キャンプから張られていた。小谷野打撃チーフコーチは高知・安芸での指導を、「テルに限らず、最大出力を上げてほしいと伝えて」と回想する。
「どうしても方向が決まってしまうような力の出し方があったので、それに対して、全方向にいけるような体のぶつけ方を意識させて」。ある日のランチ特打では柵越え9本のうち、7本を中堅から左へ運んだ。広角打法が光る現状を予告するかのような内容だ。「本人もこうしたらもっとボールに力が伝わると、感じてもらえたこともあったのかもしれない」と秋の収穫を挙げた。
4番打者としてチームを頼もしくけん引する背番号8。「(本塁打が)左に出てるのは、ずっと取り組んできたことなんで。それは自然に」と話す意識付けが、大輪の花を咲かせつつある。猛虎にとって生え抜き41年ぶりとなる本塁打王へ、夢はふくらむばかりだ。(デイリースポーツ・丸尾 匠)
◆近年の本塁打王メモ 22年に村上(ヤクルト)が日本選手として最多となる56本を放ち、史上最年少でのセ・リーグ三冠王も獲得した。しかし、23年の岡本(巨人)は41本、24年は村上がタイトルを奪回したものの本数は33本と減少傾向をたどっている。佐藤輝が、この好ペースを維持していけば自己最多となる30本、40本超え、そしてホームランキング獲得が現実味を帯びてきそうだ。
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