【阪神ドラフト選手特集・椎葉剛(3)】挫折続き一転 わずか1年で急成長シンデレラボーイに
10月のドラフト会議で、阪神から指名を受けた8選手(1~6位・育成1~2位)の連載企画。今回はドラフト2位・椎葉剛投手(21)=四国ILp・徳島=の社会人、四国ILp時代を振り返る。
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ミキハウスでの3年間は、椎葉にとって悔しさが募る日々だった。投手専念が決まって、1年目の5月に初登板。しかし振り返ると、社会人野球での公式戦マウンドはこの1試合のみ。2年目に腰痛を発症するなど実戦から遠ざかり、3年目のシーズン終わりに戦力外通告を受けた。
「クビと言われた瞬間、『明日から野球ができないんか…』と思いました。このまま辞めようかとも考えましたが、次の日には悔しくなって『絶対に見返してやる』という思いになりました」。椎葉が野球人生のどん底を回想する。ミキハウスから四国ILp・徳島に入った先輩選手の後押しもあり、独立リーグに乗り込んだ。
日本ハムやオリックスなど、NPBで指導経験豊富な徳島・岡本哲司監督(62)は、昨年10月のトライアウトで初めて椎葉を見て、「投げる歯車が全然合ってなかったんですよ。腰の回転と上体が合ってない感じ」と欠点を見抜いた。ただ、体つきは一級品で「糸井の体によく似てました。身のこなしなども」とほれ込んだ。
歯車修正のためにまずフォームを改善すると、入団時142キロだった最速は3月のキャンプでは148キロに。それまでほとんど経験のなかったウエートトレーニングにも取り組ませて、「背中側の投げるための筋肉を鍛えなさい」と指示。徳島に来て野球により真摯(しんし)に向き合うようになった椎葉は、ナイター後もジムで鍛錬した。
かみ合った歯車の効果はてきめんだった。5月までに2試合に先発して結果をきっちり残したが、球速アップを目指すためにリリーフに。勝ちパターンを担ってチームに貢献し、秋には徳島がリーグ制覇して自身初の優勝を味わった。9月29日の独立リーグNo.1を決めるグランドチャンピオンシップの準々決勝では、自己最速159キロを計測した。
挫折続きだった球道が一転、わずか1年間の急成長でシンデレラボーイとなった。親子で憧れていた阪神からの、ドラフト2位指名。父・章さん(60)は「プロ野球選手のお父さんにしてくれたのには、本当に感謝してる。こんなん、一生を100回繰り返したって、ない人はないやんか」と万感だ。タテジマをまとう孝行息子の恩返しは、まだ始まったばかりだ。
◆椎葉 剛(しいば・つよし) 2002年3月18日生まれ。大阪府出身。身長183センチ、体重92キロ。投手。右投げ右打ち。小学時代に高倉台ポニーズ、中学時代に富田林ボーイズ所属。島原中央高では主に捕手。ミキハウスで本格的に投手に。今季から四国ILp・徳島。最速は159キロ。球種はスライダー、カーブ、フォーク。
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