金本知憲が恐れる男の教え子…北條抜てきの根底にあったもの

 「阪神9-0ヤクルト」(27日、甲子園球場)

 金本知憲にもやんちゃな時代があった。プロ入りしたころ、東北福祉大の先輩、佐々木主浩が球界の仲間にこんな趣旨のことを伝えていた。「金本はやばいから、気をつけたほうがいいぞ」。これは腕っぷしの話。もちろん冗談半分だが、大学時代の金本は誰からもケンカを売られることがなかった…そういうニュアンスの「やばい」だったと聞く。

 そんな金本が一目置いて…というより、ずっと恐れていた先輩がいる。大学時代から「せいほうさん」と呼んで慕う金沢成奉がその人だ。

 もう20数年前の話。当時、福祉大1年の金本は金沢に助けられ“命拾い”したことがある。遠征中、同級生と食事に出掛けると、街で強面(こわもて)のグループから言い掛かりをつけられた。「やばい…」と立ち往生…するとそこに偶然、金沢先輩が通りかかった。一喝したそのド迫力のオーラに集団は後ずさりし、金本ら後輩は難を逃れたという。

 大阪出身で幼い頃から武道で鍛錬を積み、その腕前は全国区。「せいほうさんには誰も歯向かえなかった」。金本はそう懐かしむ。そして、スゴ腕なのは闘技だけじゃない。金沢は今、高校球界屈指の名将である。1995年に光星学院(現八戸学院光星)の監督に就任し、春夏計8度の甲子園に出場。現在は明秀学園日立(茨城)の監督として、プロ注目選手を育成する。今夏は県大会決勝で常総学院に敗れ甲子園を逃したが、今秋ドラフトで再び、金沢チルドレンが注目されることになりそうだ。

 金沢の教え子の筆頭格は巨人の坂本勇人、そして、北條史也も…。金本は先輩の大切な教え子を託されているわけだ。だからと言って特別扱いするわけではないが、今季重用される若手の中で、金本がそのプロ根性を最も認めているのが北條でもある。

 「あいつは、俺がどれだけ厳しいことを言ってもはね返してくる。タダでは転ばないというか、例えは良くないけど、どれだけどつかれたとしても起き上がってくるタイプ。根性が座ってるよ」

 北條が鳥谷に取って代わる日はくるのか。主将が不振を極めていたころ、金本にそう聞くと、「まだ無理」と即答した。が…ついにその日がきた。守備優先なら鉄壁の大和のはず。「ドキドキしたけど…」。金本は起用の胸中を明かし、それでも、彼の並外れた根性を信じて送り出した。

 あの「せいほうさん」に3年間鍛えられたヤツだから…。北條抜てきの根底に「金沢魂」への信頼があることは間違いない。=敬称略=(阪神担当キャップ・吉田 風)

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