高山“神風”サヨナラ!三邪飛免れ劇打

 「阪神4-3広島」(21日、甲子園球場)

 虎が風に苦しみ風に笑って今季3度目のサヨナラ勝利。ヒーローは阪神ドラフト1位・高山俊外野手(23)=明大=だ。3-3で迎えた九回1死満塁から、右前へプロ初のサヨナラ打を放った。その直前、三塁邪飛に打ち取られたはずが風に流されファウル。仕切り直しの一振りで勝負を決めた。九回の守りでは敵に流れた風が、最後は味方となって貯金1とした。

 高山が放ったプロ初のサヨナラ打は、気持ちだけで運んだ一打だった。歓喜のウオーターシャワーに、自然と笑みがこぼれる。五月晴れの甲子園で黄金ルーキーがとびっきりの輝きを放った。4万6772人の視線を一身に浴び、お立ち台で喜びを爆発させた。

 「本当に幸せでした、僕の方が」

 3-3の1死三塁。ベンチで臨戦態勢を整えていると片岡、浜中両打撃コーチから言葉をかけられた。「敬遠、敬遠で高山あるぞ!」。福留、ゴメスが歩かされる姿を見ても動じなかった。「打つことしか考えてなかったです」と、平常心で絶好機の打席へ向かう。

 カウント1-0からの2球目。高々と打ち上げた打球に、三塁・安部はグラブを構えた。しかし、強風にあおられた飛球はファウルゾーンへと落ちた。

 その安部に代打で右越え同点2ランを浴びた九回表は、普段の浜風とは逆の強烈なフォロー。その直前には鈴木の遊撃後方への飛球が風に流され、二塁打となった。「あんな風はない。秋でもなく雨でもなく」と金本監督。苦しめられた風が最後に“神風”となって仕切り直し。高山は3球目の高め直球を完璧に捉え、サヨナラの打球が右前で跳ねた。

 四回に左前打、八回には二塁内野安打を放ち猛打賞。「監督に『がっつくなよ』と言われていたので、ストライクゾーンを絞っていきました」。3試合連続複数安打と上昇気流に乗ってきた。チームのため、支えてくれる家族のため、止まっている時間などない。

 「欲しい物があったら何でも買ってあげるよ」。阪神への入団が決まった昨年10月。高山は妹・遥加さんと約束した。「ブランドのバックが欲しいな。6、7万するんだけど…」。妹の注文に即答。キャンプイン前の1月の終わりに2人で東京・銀座へ向かった。

 「小さい頃からいつもグラウンドへ応援に来てくれていたんです。周りの子はデパートとか行って遊んでいたと思うんですけどね」

 これには遥加さんも感激。「学校へ行く時も、遊びに行く時も全部使っています」。家族のために-という強い気持ちが高山の原動力となっている。

 「一日一日を必死にやっているだけなので、今日も明日も一生懸命やりたいと思います」。大観衆の前で約束した全力プレー。虎党は「優勝」というプレゼントを待っている。

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