最後に沸かせた“神”桧山が意地の一打

 「阪神6‐9巨人」(8日、甲子園)

 代打の神様が、最後の最後で聖地を沸かせた。7日に今季限りでの現役引退を発表した阪神・桧山進次郎外野手(44)が九回、代打で登場し、中前に適時打を放った。この一打から打線が勢いづき、一挙5得点。巨人戦の今季負け越しが決まったが、土壇場で意地をみせた。バットを置くその日まで。虎党に愛された背番号24は、残る力を振り絞る。

 ムードが一変した。重い空気に風穴をあけたさすがの一打。8点を追う劣勢を感じさせない拍手と声援に迎えられ、期待通りの一振りで聖地の熱を一気に高めた。代走を送られた桧山は、祝福のハイタッチに笑顔を見せ、注がれた大歓声に帽子を取って応えた。

 「いつもより特別な雰囲気で、それに応えられてうれしかった。ベンチでもみんなが出迎えてくれた」

 九回だ。先頭からの安打などで1死一、三塁となり「代打・桧山」のコールが響く。待ち望んでいたスタンドのボルテージが上がる。打席に入った桧山は、冷静に一岡と向かい合った。2ボールから1球ファウルを挟み、4球目の外角高めの直球を逆らうことなくはじき返すと、打球は中前に落ちる適時打となった。

 「2ボールになって(3球目は)真っすぐを狙ってちょっと振りすぎた。若干詰まったけど、いいところに落ちてくれた」

 期待は裏切らない。これで、代打通算打点は108打点となり、リーグ歴代2位の数字を更新した。前日に引退会見を行い、迎えた発表後初の打席で示した勝負強さ。甲子園では残り1試合という伝統の一戦。積み重ねてきた思いは強い。

 「特別な雰囲気で今までやってきて、自分のデビュー戦も甲子園だったし、余計に思い入れもありますね」

 幼いころからテレビで見て、プロに入って実際に体感してきた甲子園での巨人戦。この日の試合前、練習を終えると自ら三塁ベンチに歩いて、巨人・原監督に引退のあいさつに向かった。

 「昨日はあまり時間がなかったから。(会話は)懐かしいなあ、よくやられたよとか(言われて)、そんなことないですよ、とかね。自分が(プロに)入った時も(現役で)されてたからね」

 幾度の名勝負を伝統の一戦で演じ、独特の雰囲気に育てられた。感謝は尽きない。試合前には言葉で伝え、試合ではバットで示した。聖地で磨き抜いた職人芸。カウントダウンは始まっている。

 「試合に負けたから個人のことは言いにくいけど、今日に限ればみんながつないでくれて出番が回ってきたから」

 複雑な思いが、甲子園に交錯する。桧山の一打を見られて良かった。でも、あと何本見られるのか。興奮と切なさが「24」に重なる。数え切れない思いを背に、残り23試合を戦う。

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