山中竜也、母にささげる世界戴冠 高校進学せず寮生活で鍛えた雑草ボクサー

 「ボクシング・WBO世界ミニマム級タイトルマッチ」(27日、芦北町民総合センター)

 世界初挑戦の同級1位・山中竜也(22)=真正=が3-0の判定で王者・福原辰弥(28)=本田フィットネス=を破り、新王者となった。福原は初防衛に失敗。真正ジムの男子では、元世界3階級制覇王者の長谷川穂積氏(36)=デイリースポーツ評論家、WBA世界スーパーバンタム級王者の久保隼(27)に続く3人目の世界王者誕生となった。試合会場には女手一つで山中ら6人きょうだいを育てた母理恵さん(46)も駆け付け、戴冠の瞬間を見届けた。

 悲願のベルトを腰に巻いた新王者は、リング上から「お母さんにお礼を言いたい」と母理恵さんに呼び掛けた。いつもと変わらない優しい笑み。「ホッとした。皆さんに感謝しかない」と山中は初々しく頭を下げた。

 戦略で王者を上回った。サウスポーの福原が左を打つ際に右ガードが下がる癖を見抜き、的確に左フックを合わせた。相手の執ようなボディー狙いも鍛え上げた腹筋で跳ね返し、薄暗い会場の照明にも控室の明かりを消して目を慣らした。8回にトランクスがズレるアクシデントにも集中を切らさず、ポイントを積み重ねた。

 漫画「はじめの一歩」を読んで小学6年からボクシングを始めた。当時WBC世界バンタム級王者だった長谷川穂積氏に憧れ、中学2年から真正ジムに入門。毎週土曜日は堺市内の自宅から神戸市内まで通い続けた。ある時、母に「高校に行かなくていいか」と決意を明かした。「毎日ボクシングができる環境が欲しかったみたい」と母は振り返る。中学卒業後は高校に進学せず、ジムの寮に住み込んだ叩き上げの雑草ボクサーだ。

 忘れられない一言がある。4年ほど前の真正ジムの忘年会。長谷川氏が発した「このジムには、1試合1試合負けたら最後という気持ちで戦っている選手が少ない」という言葉が今も耳に残っているという。「長谷川さんのようなチャンピオンになりたい」。以来、いつも『これが最後』と思い戦ってきた。

 1週間後に初防衛戦を控える先輩の久保につなぎ、「久保さんにも楽しんでほしい」。後輩の思いは届くはずだ。

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