【野球】日本発祥の軟式野球が新ボールで目指す世界普及
遊びでも野球をやったことがあれば、誰もが一度は握ったはずだ。少しざらっとしたゴムの質感と適度な硬さ。軟式野球ボールに触れると、懐かしい記憶がよみがえった。全日本軟式野球連盟と野球ボール工業会が会見を開いたのは12月1日。新規格のボールを開発し、17年末から発売することを発表した。
今回の規格変更では、現在のA号(一般用)、B号(中学生用)、C号(小学生用)を、M号(中学生以上用)とJ号(小学生用)に。バウンドを10~15%低くする一方で、ボールを変形しにくくして空気抵抗を抑え、飛距離アップを実現した。
今回の変更では、打球感などをより硬式ボールに近づけた。低バウンドを要望する使用者の声が多かったためだ。新ボールの基本コンセプトには「軟式ボールの安全性を軸に、時代の変ぼうに柔軟に対応し、軟式野球競技者・愛好者が各ステージにおいて軟式・硬式の相互移行を図りやすくし、野球文化の維持・拡大に寄与する」とある。全日本軟式野球連盟の宗像豊巳専務理事は「投球、守備、打撃における基本的姿勢の一元化が期待できる。『軟式だから』、『硬式だから』といったことがなくなると思います」と狙いを明かした。
その先には、軟式野球を世界に普及するという目標もある。最初の軟式ボールが開発されてから100年。発祥の地・日本では草野球も含め、プレー人口は約200万人とも言われるが、海外での広がりは限定的。アジア6カ国、南米や中南米諸国がメーンで、米国は少年層に関しても「野球は硬式だ」という考えが根強いという。連盟関係者は「日本の文化でもある軟式を世界に発信したい。新ボールは硬式との違和感が少ない。世界大会につなげていきたい」と力を込める。
軟式の最大の特長は、何と言っても安全性だろう。ゴム製で中は空洞。ボールをぶつけた時の衝撃値は、硬式を100とすれば25~33%。よほどの勢いで急所に当たらないかぎり、大ケガにつながる可能性は低い。
また、公認試合球は硬式の1000円程度に対し、軟式は600円。価格面もリーズナブルだ。雨にぬれてもボールが重くなることはなく、汚れた時は簡単に洗うこともできる。
一番の野球大国・米国で広まれば、世界への普及の流れも変わるはず。野球ボール工業会の柳田昌作会長(ナガセケンコー株式会社・代表取締役社長)は「米国は合理的。安心・安全だ、雨でも大丈夫で洗える、となれば、受け入れられるのではないかと思っています」と期待する。
軟式、硬式にはそれぞれの良さがあるといっても、野球の質が大きく変わってしまうのは考えもの。新ボールは、その差を縮めてくれる。モニターとなった選手からは「低バウンドで打球が飛ぶ。まさに魔法的なボール」と従来との違いに驚き、歓迎する声があがったそうだ。記者も実物を握ってみたが、重心がしっかりして、芯が詰まっているかのような感触があった。
M号(=メジャー)の名称は「世界に羽ばたこう」という願いが込められている。安心、安価、誰でもいつでも楽しむことができる軟式ボール。野球界の発展に、新規格が大きな役割を果たしてほしい。(デイリースポーツ・藤田昌央)




