【スポーツ】豪栄道が示した潜在能力と和製横綱誕生の可能性

 大相撲の大関豪栄道が九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)で初の綱とりに挑む。今年は初場所で大関琴奨菊が初優勝し、翌春場所で綱とりに挑戦して失敗。その春場所で13勝した大関稀勢の里は翌夏場所から名古屋、秋場所と3場所連続の綱とり場所を経験したが、大願成就はならず。和製横綱誕生を待ち望む相撲ファンをやきもきさせた。では、九州場所の豪栄道は悲願を達成できるのか-。

 豪栄道は秋場所を15戦全勝で初優勝を果たした。その秋場所、横綱白鵬は故障で休場だったが、日馬富士、鶴竜の両横綱、稀勢の里、琴奨菊、照ノ富士の3大関を撃破し、かど番からは史上初の全勝優勝だった。この快挙については本人は「古傷の状態がよく、場所前にしっかり稽古ができたことが大きい」と理由を説明した。

 豪栄道はけがが多い方だ。左膝半月板損傷や左肩骨折を経験し、今年は右太ももを肉離れし、左目付近を骨折した。度重なるけがに見舞われ、大関昇進以降の13場所で2桁勝利はわずか1度。先場所は4度目のかど番だった。場所前に万全の稽古ができた場所はほとんどなかったという。

 それが、先場所前はいくつかの必然や偶然が重なって、稽古を十分にできた。それが本場所の土俵に表れ、初日から千秋楽まで無傷の快進撃を演じた。相撲内容については、過去にないといっていいほど充実したものだった。

 辛口で知られる審判部の友綱副部長(元関脇魁輝)はこう話す。

 「先場所の豪栄道はそれまでとは別人のような相撲を取った。以前は当たった後で、しばしば引いたり、はたいたりしたが、この場所はそれがほとんどなく、常に前へ出ていく本来の相撲を取り切った。彼のよくある失敗例としては、頭では自分が前へ出ているつもりでいても、足がついていかないことが多かったが、先場所は足もよくついていっていた。だから、土俵際で相手に突き落とされたり、はたかれたりしても、足が出ていった分、僅差で勝てた。場所前の稽古が十分にできていたんだと思う」

 先場所後には角界関係者の中から豪栄道は先場所で劇的な変身を遂げたのではないかという見方も出たが、私はもともと備えていた強さをようやく出せたいうことではないかと思う。

 理由は場所前の体調がよく、稽古を十分にできたことがあるが、それは逆の見方をすれば、体調がまずまずで、当たり前に稽古ができさえすれば、豪栄道は全勝優勝できるくらいの潜在力をもともと持っているということだろう。となれば、九州場所も十中八九、引かずはたかず前へ出る相撲を取ることができるはずで、毎回失敗を繰り返す稀勢の里ではなく、豪栄道にこそ綱とり達成を期待していいのではないだろうか。

 前出の友綱審判部副部長は豪栄道の九州場所をこう予測する。

 「豪栄道が先場所と同じ相撲を取れれば、綱とりは十分にあるのではないか。取り口はお客さんには、ばたばたしているように見えるかもしれないが、実は理詰め。(横綱)白鵬が復帰するけど、そんなに気にすることはない。綱とりの可能性は変わらないと思う」

 常に土俵に厳しい目を向ける同親方でさえも、九州場所での和製横綱誕生を予言する。浪速生まれの大関が冬の博多で男になるかもしれない。好角家の皆様にはぜひ見逃してほしくない場所が訪れようとしている。歴史的な瞬間へのカウントダウンが始まった-。(デイリースポーツ・松本一之)

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